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2005/09/19

旅立つ友へ(私信)

いってしまいますか。淋しくなります。
日本人へはもとより、中国の人へも、熱意の限りを示すのはいいですが、体を壊すような無理をして、双方から馬鹿みないように。
昇龍よりも臥龍の心得で頑張りなさい。
御家族も、どうか恙無き様。
わが手は、やや変形しつつも治癒へ向かい、来週の火曜にはギブスをはずせます。
二月ぶりの風呂だけが楽しみです。

  雲雀   伊東靜雄

 二三日美しい晴天がつづいた
 
 ひとしきり笑ひ聲やさざめきが
 
 麥畑の方からつたはつた
 
 誇らしい収穫の時はをはつた
 
 いま耕地はすつかり空しくなつて
 
 ただ切株の列にかがんで
 
 いかにも飢ゑた體つきの少年が一人
 
 落ち穂を拾つてうごいてゐる
 

 
 と急に鋭く鳴きしきつて
 
 あわただしい一つの鳥影が
 
 切株と少年を掠める 二度 三度
 
 あつ雲雀――少年はしばらく
 
 その行方を見つめると
 
 首にかけた袋をそつとあけて
 
 中をのぞいてゐる
 

 
 私も近づいていつて
 
 袋の底にきつと僅かな麥とともにある
 
 雲雀の卵を――あゝあの天上の鳥が
 
 あはれにも最も地上の危險に近く
 
 巣に守つてゐたものを
 
 手のひらにのせてみたいと思ふ

 そして夏から後その鳥は
 
 どこにゐるのだらうねと
 
 少年と一緒にいろいろ雲雀のことを
 
 話してみたく思ふ

いつか二人して行く大和路を今から楽しみにしています。
では 随分 ごきげんよう いってらっしゃい!

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