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2005/11/20

龍之介と朔太郎 その別れ

誰にも涙を禁じえない一文というものがあろう。僕の愛する二人の孤独な魂の忘れられない交感の一瞬。そして、それが、最後の別れとなるのだ……長文なので、とても一気に打つことができない。とりあえずそのクライマックスを……。

 

芥川龍之介の死   萩原朔太郎

 

         13

 その夜さらに、室生犀星君と連れだち、三人で田端の料理屋で鰻を食べた。その時芥川君が言つた。

「室生君と僕の關係より、萩原君と僕のとの友誼の方が、遙かにずつと性格的に親しいのだ。」

 この芥川君の言は、いくらか犀星の感情を害したらしい。歸途に別れる時、室生は例のずばずばした調子で、私に向かつて次のやうな皮肉を言つた。

「君のやうに、二人の友人に兩天かけて訪問する奴は、僕は大嫌いぢや。」

 その時芥川君の顏には、ある悲しげなものがちらと浮んだ。それでも彼は沈默し、無言の中に傘をさしかけて、夜の雨中を田端の停車場まで送つてくれた。ふり返つて背後をみると、彼は悄然と坂の上に一人で立つてゐる。自分は理由なくして寂しくなり、雨の中で手を振つて彼に謝した。――そして實に、これが最後の別れであつたのである。

やぶちゃん注:萩原朔太郎「廊下と室房」より、「芥が龍之介の死」の13章全文である。「最後の別れ」には「○」の傍点があるが、ここでは太字とした。底本は昭和51(1976)年刊筑摩版全集を用いた。

僕はこの作品を生徒に紹介した後、次のように言うのを常としている。

「一体誰が、僕の最期の時に、こうして手を振ってくれるだろうか……」

それは冗談ではない、正直な羨望だ……。

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