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2006/03/02

俗の中に魔は隠れている

エリアーデは「俗の中に聖は隠れている」と言った。

先日、敬愛する伊福部昭先生が亡くなった。たまたま、ある知人と彼の楽曲の話をし、お互いに持っているものを貸し借りした。僕にとって、戦後映画、とりわけ本多猪四郎、円谷英二のゴジラを始めとする特撮映画の音楽とSEのイメージの中に、伊福部先生はいた。

昨日、その知人の貸してくれたものの中に、驚天動地の一曲があった。いや、その曲がその時使われた、その時、伊福部先生自身が驚いたという。

……マッカーサーが厚木基地に降り立った映像は有名だ。あのコーンパイプを銜えた有名な、あの時、彼があの足を、敗戦国日本の地に降ろした時、何の曲がかかったか。

勿論、アメリカ合衆国国歌に決まっている。しかし、それでは、マッカーサーが迎えの者共の敬礼を受け、車上の人なるには、短かった。国歌の演奏の後に、かかったのは伊福部先生の曲だったのだ。

それは戦中に、海軍が先生に依頼して作らせた古典風軍楽「吉志舞」だった。

それを、聞いて僕は愕然とした。

その、主調部分の金管の奏でる、荘重な、力強い、メロディは……

1954年の「ゴジラ」の水雷攻撃の颯爽たるフリゲート艦出撃の、あのフレーズであり、それにジョイントするのは「怪獣大戦争」のテーマであった……

マッカーサーは作曲者も誰も知らないうちに、まだ現れぬゴジラの、メタファーであったのだった……

これは、冗談ではない。

その衝撃の覚めやらぬ中、夜、僕はNHK教育の、ドキュメンタリーを見ていた。ドラキュラ伝説に関わる民俗学的考察の至って真摯な海外ドキュメンタリー。勿論、取材地はルーマニアだ。

ドラキュラがトラキアのフラド・テペシュ公、ヴラド串刺し公をモデルにしていることは、物好きならば、誰もが知っている。

番組の最後で、社会主義を私物化した、あの独裁者チャウシェスクが、市民の民主化蜂起の中、ヘリで最後の逃亡してゆく映像が映った……。彼は、勿論、惨めに銃殺された。その映像もかつてニュースで見た。しかし、彼が、逮捕された逃亡の地は、知らなかった。

それは、フラド・テペシュ公の城、ドラキュラ城であった……

これも、冗談ではない。

エリアーデの言葉は、考えてみれば、その逆も信なりということは、謂うを待たないのだと、僕は、感じたのだった。

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