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2007/11/24

丘邊のさまよひ 生田春月

若き日の夢

  丘邊のさまよひ   生田春月

月おぼろにして我が影うすし、

我が生命(いのち)さへ覺束なきかな。

靜かなる心だにあらば

たのしさは來らむものを。

あはれ、日にして夜(よる)として

我が胸の靜なることはあらず。

ある時は、死の谷に迷ひ、

ある時は、嘆きの海に溺る。

こゝに一日(ひとひ)の惱みよりのがれ出でて

ひとり丘邊にさまよひ來(く)れば、

繁れる松の樹の影もうすし。

夕風のなかにそよげる草のごとくに

寂しくてたえだえなる我が生活は、

節ほそく哀れに鳴りて、

おぼろおぼろの歌とこそなれ、

影もろともに薄らぎつゝも。


第一詩集「霊魂の秋」の巻頭を飾る。「若き日の夢」という大題目があるが、そこに記されるのは、この詩のみである。今日までに春月の「末期の眼」のみに捕らわれていた。これは、十九歳の春月の、詩人の最初の呟きである。底本は昭和42(1967)年彌生書房刊廣野晴彦編「底本 生田春月詩集」であるが、可能な部分を恣意的に正字に直した。

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