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2008/10/06

呪詛 イワン・ツルゲーネフ

 呪詛

 私はバイロンの「マンフレッド」を讀んでゐた……。マンフレッドの殺害された女の怨靈があらはれて、彼に奇怪きはまる呪詛の言葉を述べる場面に到つて、私はおのづからなる戰慄を覺えてゐた。
 あの、記憶してもおられることであらう、「これから眠れぬ夜々が來ればよい、御身(おんみ)の邪惡な魂が、眼に見えず執拗につきまとふ妾を感じ、魂そのものが御身自身の冥府ともなるやうに」
 さて、私には別のことが胸に浮んだのである。……あるとき、ロシヤにゐた時分に、私は父と子、二人の農夫の酷い爭ひを目撃したことがあつた。
 つひに息子は父に忍ぶべからざる罵言をあびせかけた。
 すると老母が「呪つてやんなさい、ワシリーヰッチ、呪つて、不孝者めを!」と叫んだ。
 「まあ、いいさ、ペトローヴナ、」老父がかすかな聲で應へて大きく十字を切つた。
 「母親の眼の前で父親の白くなつた髯に唾をかけるやうな息子が、こいつにも出來るんだ!」
 この呪ひの言葉は私には「マンフレッド」の呪詛よりも怖ろしかつた。
 息子は何か言ひかかつてゐた、が、よろめいて顏を眞蒼にしたかと思ふと、出て行つてしまつた。
   一八七八年二月

■訳者中山省三郎氏による「註」
・この詩は最初「マンフレッド」と題されてゐた。

昨日の今日だ。補注はいるまい。但し、こちらは遺稿の「一八七八年二月」、あちらは「一八八二年十一月」――正直言えば、この「カラマーゾフの兄弟」のワン・シーンのような芬々たるロシア的教訓臭さより、死を覚悟したツルゲーネフの「拾遺」篇の昨日の「幼な兒の泣くこゑ」の悲泣一聲の方が、全く以て、僕は好きなのである。

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