こけし人形 尾形亀之助
雨が降ると温泉宿は暗い。霧がこもる。そして木ぼこの匂ひがする。唇の紅と、びんのところに一筆塗つてある青と、白い木肌の匂ひである。木ぼこのあの丸い大きな頭から匂ひがしみ出るのだらう。つるつるとした顔は子供のやうにも大人のやうにも見える。御神体のやうでもある。――彼女は東洋人である。
どうかした拍子で、私は木ぼこで頭をこつんとやられたことがあつた。そんなことがあつた。(木ぼこの頭は重い)
木ぼこは木のこにも似ている。
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(こけし這子の話 昭和3(1928)年1月発行)
[やぶちゃん注:傍点「ヽ」下線に代えた。底本編注に『「こけし人形」(こけし這子の話・昭和3年1月、著者発行人天江富弥、仙台郷土趣味の会。同書はこけし研究書の嚆矢。巻末付録「こけしに関する詩文」に武井武雄、白鳥省吾、石川善助、尾形亀之助が寄稿している。)』とある。]

