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2009/09/10

色ガラスの街とは?――尾形亀之助『色ガラスの街』「序の二」をシナリオに再構成して見えてくる僕の色ガラスの街――

(画面オフで)

(モノローグ。尾形亀之助の肉声・「だ」体で)

「その街は人のゐない街だ」――

(間を置いて。今度は、あらたまった「です」体で)

その街は……「一人の人もゐない 犬も通らない丁度ま夜中の街をそのままもつて來たやうな氣味のわるい街です」――

(続けて)

その街は……「街路樹も緑色ではなく 敷石も古るぼけて霧のやうなものにさへぎられてゐ る どことなく顏のやうな街です」――
その街は「風も雨も陽も ひよつとすると空もない平らな腐れた花の匂ひのする街です」――
その街は「何時頃から人が居なくなつたのか 何故居なくなつたのか 少しもわからない 街です」――

(長い沈黙)

『それは    
「こんにちは」とも言はずに私の前を通つてゆく
私の旅びとである』街――

(暫く沈黙)

「そして
私の退屈を淋しがらせる」街な「のです」――

(画面オフのまま雨の音。F.I.)

(外。尾形亀之助の家の裏庭。ズーム・アウトして窓、亀之助の二階の書斎、和机に座る和服姿の尾形の後姿――)

(真っ白な原稿用紙。ペンを執った和服の手が右手から入ってブラック・インクで書き出す。最初、原稿用紙3行目5マス目から『序 の 二』と書き、ちょっと間を置いてから5行目3マス目から、『煙草は私の旅びとである』と書く。暫く間を置いてから7行目冒頭から一気に。一行おきに以下(「そして 暗い日暮れに風が吹いて流れ 雨にとけこむ日暮れを泥ぶかい沼の底の魚のやうに 私と私の妻が居る」は続いた一文で)。カメラは書かれてゆく一字一字のみを追う。その間、ただペン先の擦れる音と、オフで聞こえて来る雨音。)

「朝早くから雨が降つてゐた

そして 暗い日暮れに風が吹いて流れ 雨にとけこむ日暮れを泥ぶかい沼の底の魚のやうに 私と私の妻が居る

私は二階の書齋に 妻は臺所にゐる」

(「る」の字から、ゆっくりズームアウト。『序 の 二』から4行から成る詩『煙草は私の旅びとである』原稿用紙全体が映ったところで、静止。この間もオフで聞こえて来る雨音、そしてズームの途中から幽かに遠くから俎板に当たる包丁の音)――――――

(F.O.)

[やぶちゃん注:モノクロ。「敷石も古るぼけて霧のやうなものにさへぎられてゐ る どことなく顏のやうな街です」の「る」の前の一字空けは初版『色ガラスの街』のママである。これは誤植と思われるが、明らかに空いている。但し、行末であるため、殆んど誰にも気づかれることはない。]

これから 僕がお見せしようとする『色ガラスの街』は 僕の『色ガラスの街』で 他の誰の『色ガラスの街』でも ないのです――

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