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2009/10/14

耳嚢 大陰の人因果の事 ≪R指定≫

「耳嚢」に「大陰の人因果の事」を収載した。≪R指定≫――は勿論、冗談である。そもそも未成年はそうした「覗き見」を経てこそ、大人という愚劣な存在を批判的且つ正常に知覚し得るのである。自己責任というどっかで使われた言葉は、こういう時にのみ有効であると僕は考えている。どうぞ、自己責任で以下、お読みあれ。

 大陰の人因果の事

 

 信州の百姓成由、夫婦に一兩僕召過ひ相應に暮しけるが、近郷より用事ありて、二里計も脇へ至り、急雨にて甚難儀せし故、其邊にありし一ツ屋へ立寄、晴間を待けるに、奇麗成住居にて馬も繋ぎ置、年比二十斗成男たば粉呑(のみ)ながら、雨の難儀など念此に訪(と)ひいたりしが、着座しながら衣類しどけなかりしに、兩膝の間より男根の見へけるが、膝とひとしき迄に見へて驚きければ、亭主も其氣色(けしき)を悟り甚困りける樣子故、扱々珍ら敷一物かな、人事は如何いたしけるやと尋ければ、何か隱し可申(まうすべき)とて、右陽具を見せしに、最初ほの見しに増(まさ)りてあやしき迄に思ひければ、彼人答て、我等此一物故に、哀成身の上也、元來某(それがし)は此一二町脇に、見もし給ん酒商ひする者の倅也、身上も相應に暮しける故、妻妾をも貯(たくはへ)ん事なれど、いか成事にや、此陰莖人並ならざるの品故、生れて人事をしらず、金銀を費し所々配偶を求さがせども可有樣(あるべきやう)なければ、空敷(むなしく)月日を過し、責(せめ)ては煩惱を晴さんと、あれに繋ぎ置(おく)馬を我妻妾と心得、淫事の起るごとに右馬を犯し思ひを晴し、生ながら畜生道に落(おち)しと、何ぼう悲しき身の上と語りければ、百姓もあきれ果、雨も止ぬれば暇乞して歸りけるが、妻に向ひて今日かくなる所に至り、不思儀の陽物を見し事かな、汝が常に我を拙(つたな)しといひしが、かく大物も又捨(すた)り物と戲れ語りしに妻の云けるは、かゝる不思儀の片輪ある物哉、物にたとへたらんにはいかやうなりと尋しに、床に掛有し花生(はないけ)をさして、凡あの通也と語りければ、いかでさる物あらんと笑ひぬ。其日もくれ翌日も立(たち)て翌朝に成て、其妻いづちへ行けん行衞不知故、心當りの所尋けれど一向相知れざるゆへ、召仕ひの丁稚に常に代り狂氣ばししたる樣子もありやと尋ければ、外に心當りも無し、若(もし)亂心もしたまひしや、きのふ晝頃床に餝(かざ)りし花生をとりて持(もち)なやみ、膝の上へ當て拜し給ふをほのみしと語りければ、彼(かの)夫始て心付、一昨日大陰の人の物語したる折から、花生にたとへしを、婬婦の心より好ましく立出るならん、語るも恥しと、強て尋るに及ず、某心當りありと晝頃より出て、彼の大陰の人の許に至り音信(おとづれ)ければ、最初と違物靜成るが、彼の男立出て、これは此程雨舍りの人なるか、いか成用事にて參られしと尋ければ、此間雨舍(やどり)の禮に寄たり迚(とて)、四方山の咄しの上、主(あるじ)は色もあしく何か物思ひの姿成るが、何ぞかわりし事もあるやと尋ければ、さればとよ、無慘にも哀れ成る事ありて自然と面(おもて)に顯(あらはれ)しならん、先に足下(そこもと)歸り給ひし後、一兩日の後にも有けん、夜四ツ時此と思ふ頃、表を音信るゝ者あり、扉を開き見侍れば、年此四十斗成女の、旅の者なるが頻りに腹痛いたしなやみけるが一夜の宿を借し給へと申ゆへ、獨身の譯など斷りけれど頻に腹痛の由を申、達(たつ)て願ひける故、此一間に置て湯など與へ介抱いたしければ、右女聲をひそめ、其が陽物拔群のよし聞侍る、一目見せよと乞ける間、埒もなき事を申さるゝ物哉、如何して我が身の上の事知りたるやといなみければ、御身の陽物尋常ならざる事は往還の馬士(まご)又は荷持(にもち)迄もしりたる事、何か隠し給はんといへるゆへ、何となくこわけ立て、若(もし)や魔障のなす所ならんかと、暫くいなみしが、曾てあやしき者にはなし、旅の者ながら此近隣に暫し彳(たたず)みし身也と語り、其樣化生(けしやう)の者とも見へざるゆへ、いなみ難く出し見せければ、しきりに手を以て撫廻し、或は驚き或は悦び狂亂の如くなる故、頻に我も婬心を生じ、夫なき身ならば我と雲雨の交りをなさんやと尋しに、斯る陽物を受んとも思はれねど其業(わざ)なしみ給へと終に高唐夢裡(かうたうむり)の歡をなしけるに、いかなる大海にや、事なく芙蓉の影を移し何卒妻として旦夕(たんせき)契りをなさんと右女のいゝ願ひけるゆへ、我も生れて人道をしらず、始て此德人を得しと悦びけるが、朝も速(はやく)に起出てまめ/\しく働き、飼置る馬にも秣(まぐさ)などかはんといいけるを、我等かはんと申せしをも不用、厩に至り秣をかひけるが、馬に妬氣(とき)や有けん、只一はねに右女を押へ喰殺しける。我も生涯の不具因果を感じ出家せんと思ひけるなり、此事人に語(かたら)んも面(おもて)ぶせ故、裏なる空地へ右女の死骸を埋(うめ)けると、涙と共に語りしを彼百姓聞て、さながら我妻也といわんも面目なければ、哀れなる咄承る物かなと云て立別れけると也。

 

□やぶちゃん注

・「訪ひいたりしが」ママ。

・「不思儀」ママ。

・「舍(やどり)」は底本のルビ。

・「足下(そこもと)」岩波版では「そつか」とルビするが、採らない。

・「夜四ツ時」午後10時頃。

・「彳みし」底本では右に「(專經關本「かかり居し」)」とある。どちらも、以前長く住んでいた、の意である。

・「化生」底本は「化粧」で、右に「(化生)」と注。補正した。

・「雲雨の交り」男女の情交(楚の懐王が、朝は雲となり夕べには雨となると称する女に夢の中で出逢い契りを結んだという宋玉の「高唐賦」に基づく)。

・「高唐夢裡」前注参照。

・「いかなる大海にや」底本は「大海」が「大開」となっているが、如何にも直接的でお洒落じゃない。何より続く「芙蓉の影」との繋がりが悪い。その観点から岩波版の「大海」を採用した。

 

 

■やぶちゃん現代語訳

 

 巨根の人の因果の事

 

 信州のある百姓の話の由。

 ある百姓夫婦、下僕二人を召し使って、相応に豊かな暮しをしておった。

 ある時、夫は近くの村に用足しがあって出掛けたのだが、帰りがて、家からは未だ二里ばかりも離れた辺りまでやって来たところ、急な大雨に見舞われ、ひどく行き悩んだため、その附近にあった一軒家へ立ち寄り、晴れ間を待つことにしたのだが、そこは小奇麗な住居で、屋敷内には馬も繋がれており、年の頃三十ばかりの男が煙草をのみながら、百姓が受けた、この雨の難儀を頻りに慰藉など致しておったのだが、その胡坐をかいて座っている、その衣類の裾が乱れて、その両膝の間から、その男の一物が見えた。それが何と――太さも長さも膝と同じほどに見えて驚いたのだった。また、亭主の表情には、百姓が己が一物を覗き見て、驚いているらしいことに気づき、甚だ困惑している様子も見てとれた。そこで百姓は思い切って、

「……さてもさても、珍しい一物をお持ちじゃ……されど……夜の交わりの方は如何(いかが)なさっておられる?」

と訊ねたところ、

「……お気づきになられては、何の隠しようも御座らねば……」

と言いつつ、亭主は服をめくると一物を見せた――

 ――その巨大にして長大なること、先程、ちらと見た時にも増して、不気味なものとまで感じられる「もの」であった。呆然とした百姓に向かって、男は徐に語り始める――

「……私は、この一物故に、哀れなる身の上に御座る……元来、私めはこの先一、二町のところで――ここにいらしゃる途中、御覧になられませなんだか――酒商いをしておる者の息子で御座る。商いも捗り、相応の暮らし向きで、何不自由ない身の上で御座った……さて、そこで妻や妾の一つや二つと思い立ちましたが……如何なる因果か……この陰茎が人並み外れたものであります故に、未だ生まれてこの方、女との交わりというものを知りませぬ……金品を費やし、あちこちに連れ合いとなれる女を探し求めましたが、この一物に見合う女など見つかるはずもこれなく、空しく月日を過ごしておりました……が、かくなる上は、この日々募る色欲の煩悩を何としても晴らしてやる!……と、あれに繋いでおります馬を……私めの妻だ妾だと心得……淫らなる気持ちが沸き起こるごとに、あの馬を犯しては思いを晴らし……正に生きながらにして畜生道に落ちておりまする……どれだけ悲しき身の上か、お察しあれかし……」

と。

 さすがの百姓もこの話には呆れ果てた。気がつけば、雨もとっくに止んでいた。百姓は亭主へ早々に暇乞いをして家へと帰った。

 その夜、百姓は、妻に向かうと、

「今日、これこれの場所に雨宿りしたが、そこで不思議な巨根を見たんじゃ。お前は常に儂の一物を小さいと馬鹿にしよるが、あのような大物も、これまた、役立たずの不用品じゃて。」

と冗談半分に語った。すると妻は、

「そんな不思議な片輪もんなんぞ、あるもんですか。……でも、因みに物に譬えてご覧になるなら……それって……どれ位の、「もの」……でしたの?」

と訊ねたので、夫は、丁度、床の間に掛けてあった花瓶を指さし、

「そうさな。あれと太さも長さも同(おんな)じだ。」

と言ったので、妻は、

「どうして! そんなもの、あるわけ、ないわ!」

と笑った――

 ――その日も暮れ、翌日も経ち、翌々日のの朝となった。

 と、その妻、一体何処へ行ったものやら、行方知れずになったため、夫は心当りを訪ね回ったものの、一向に所在が知れぬ。困り果てた夫は、召使っていた丁稚に、

「この数日、普段と変わって、何か気が違ったかのような素振りなどなかったか?」

と訊ねたところ、丁稚は、

「……これといったことは特にありませぬ、と申し上げたいところですが……そう言えば、もしや、少しご乱心なさったのでは、と思うたことが一つ、御座いまして……昨日の昼頃のことで御座います……床の間に掛けてある花瓶を取り外し、頻りに苦しそうな御様子で……その……その花瓶を、ぎゅっと膝の上に押し当てなさっているさまを……垣間見まして御座います……。」

と語った。

 夫はそこで初めて、妻の失踪の意味を了解した。

『一昨日、巨根の男の物語した折りから、それをかの花瓶に譬えたが……あの女、淫らなる心からそれを求めて出奔致いたのであろう……いや、これは丁稚に語るも恥かしいことじゃ!』

と思い、落ち着いた風を装って、丁稚には、

「強いて探すには及ばぬ。今、思いついたが、別に、儂に心当たりがあるでの。」

と言い置き、昼頃になって家を出でて、例の巨根の男の家に至り、満を持して、戸を叩いた。

 先日、雨宿りをした時に比べると、家の内が何だかやけに森(しん)としていたが、暫くしてあの亭男が家から出て来た。

「……これは……先だっての雨宿りなさった御人(おひと)で御座ったか……さても……如何なる御用で参られた?……」

と丁重に、しかし如何にも沈んだ声で応えたので、

「いや、先日の雨宿りの御礼に立ち寄って迄で御座る。」

と、何気なく、とりとめもない話などした後、思い切って、

「……ご亭主には如何にもお顔も色が悪く……何かご心痛の体(てい)なるが……何ぞ変わったことでも御座ったか?」

と切り出した。

「……さればこそ……無惨にも哀れなる出来事が御座いました……それが、自然、面(おもて)に表われたので御座ろう……」

と、亭主は語り出す――

 

……先だって、あなた様がお帰りになってから、さても二日程たってからのことでしたか――余りの悲しさに時の移ろいも忘れ果ててしまいました――いえ、そう、昨日の夜の四つ時頃のことでしたか、家の表戸を頻りに叩く音が致しました。扉を開けて見てみますると、年の頃四十ばかりの女が、

「……旅の者なれど、頻りに腹痛致し、苦しゅう御座いますれば、どうか、一夜の宿をお貸し下さいませ……」

と申します故、私が独身(ひとりみ)であることなど申して断わったので御座るが、頻りに腹痛の向き申し訴え、たっての願いと縋る故に、この一間に寝かせ、白湯(さゆ)など与えて介抱してやりました――

 ――ところが――暫くして、腹痛などなかったようにけろりとした女は、やおら声を潜めると、あろうことか、

「……あなたさまの一物、抜群の由、聞き及びまして御座います……一目……お見せ下さいませ……」

と乞うてきたのです。勿論、私は、

「埒もないことを申される! そもそも私の身の上の、一事に附き、何故にそのようなものと思ったか!?」

と断わり質しましたところ、女は、 

「……御身の一物の尋常ならざること……街道を往き来する博労や荷持ちといった下餞の者に至るまで知らぬ者とて、ない……何を今更、お隠しなさるのか!……」

と、逆に激しい口調で迫って参りました――

 ――私には、何とも言えぬ、恐ろしさが湧き上がって参りました――これは、もしや魔性のもののなす仕儀にてはあるまいかと感じ、ただひたすらに断わり続けておったのです――が――

「……私は決して怪しい者では御座いませぬ……旅の者では御座いますが……この近辺に暫く住んだことのある者に御座いまする……」

と、少し落ち着いて、優し気に語り出すその様子は、化生のものとも思われず――

 ――つい――断り切れずに一物を出して見せました――すると女は頻りに手で撫で回しては、或いは驚き、或いは喜悦の声を洩らして、狂ったようになり――その中、私めも頻りに欲の渇きが昂じて参りまして――己が一物のことも忘れ、つい――

「……あなたも夫なき身であるならば……私と……雲雨の交わりをなしては……下さらぬか……」

と申しました。女は、

「……このような一物を私が受け入れらるるものとも思はれませぬが……どうか、その雲雨の交わりを、お試みあられよ……」――

 ――そうして――終に高唐夢裡の歓びを――成しました――美事、成したのです――どのような広大無辺なありがたい海であったことか――私の、この大輪の芙蓉の花は、その姿を少しも欠くこともなく、その水面に映し出すことが出来たのです――

「……どうかあなたさまの妻としてお迎え戴き……日々の契りを致しましょう……」

とこの女が願い出ました故、私めも生れてこの方、人の女を、高唐夢裡の歓びを知らず、初めてこの美人を得た、と心より喜びました――

 ――夜が明けた――今朝のことで御座いました――

 女は、朝も早くから起き出だし、何やかやとまめまめしく働いてくれ、飼っている馬に秣(まぐさ)をやりましょう、と言うので、

「秣は私がやるよ。」

と申したのも聞き入れず、女は厩に行き、あの馬に秣をやろうとしました――

 ――馬にも――妬心というものがあるのでしょうか――

 ――ただ一跳ねに、女を床に押さえつけ――私が駆けつけた時には、既に――女を、喰い殺しておりました……

 

……私めも、持って生まれたこの不具……私めを巡る、この忌まわしい因果の法に感じ……出家を遂げる覚悟にて……このような話、人に語らんも恥なれば……哀れとは思えど、今し方……女の骸(むくろ)を……裏の空き地に埋めまして、御座る……」

と、亭主が涙ながらに語るのを聞いて、しかしながら、その女は私の妻だ、とも言えず、余りの恥かしさに、

「……哀れなる、話を、承った……」

と言ったまま、立ち別れた、ということである。

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