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2010/11/20

予告篇 芥川龍之介「河童」やぶちゃんマニアック注釈冒頭河童一覧

遂に、取り敢えず芥川龍之介「河童」の僕の注釈が最後までいった。これより細部補正に移る。ブログの260000アクセス記念としてテクスト本文(勿論、正字正仮名)とともに公開する予定ではあるが、現在只今のアクセス数は255790であるから、公開は12月上旬になりそうだ。この一ヶ月、どこかで最悪、大腸癌の罹患を予測しながらの注釈作業となったから(幸い癌ではなかったのであるが)、結構、『鬼』の部分がある――だから――何となく、ちらっと見せておきたい気になった。注の冒頭に置いた「登場河童一覧」である。

   登場河童一覧〈例外として獺一匹を含む。登場人物も附した〉

 

*原則、登場順(「グルツク」を除く)。固有名を持つ者だけでなく、読んだ際に映像としてほぼ単独でアップになる河童は漏れなく、また名前だけが登場する河童も含む。見出しに掲げたカタカナの河童の固有名だけは本文表記通りで示した。更に、私が同定候補とするモデル人物を付記した(同定者詳細及び同定理由は以下の各注を参照されたい)。なお、他の「登場人物」(●)としては「序」と「十七」に登場する以下の3名の人間がいる。

●主人公「僕」:「二」以下の話者。河童国特別保護住民。訪問したと称する河童国の叙述等、高度な論理的体系を持った妄想性を主症状とする統合失調症でS精神病院患者番号第23号。内的には極めて秩序立った河童国訪問談の妄想の最後には(恐らく相手が話を信じていないということを察知すると)拳固を振るい、罵詈雑言を吐くことを常とするようであるが、実際の他虐傾向はあまり認められないように感じられる。三十歳を有に越えている(35歳前後か)が若く見える。穂高や槍ヶ岳への登頂経験を持ち、穂高単独登頂への自信が有意に認められる相応のアルピニスト。社会主義者で物質主義者(宗教を真面目に考えないという文脈からは唯物主義者という意味でとってよい)。草稿や話っぷりからも大学を出ており、通常の会社勤めの経験がある(草稿で確認出来る)。その後、サラリーマンを止めて起業家となったが、事業に失敗、推測するにその際に受けた精神的なストレスが遺伝的素因が疑われる統合失調症の発症へと繋がったものと思われる。なお、発症の直接の動機となった事業の失敗は、当初はPTSD(心的外傷後ストレス障害)としてのみ現れたものとも思われ、S博士が制止することから激しいフラッシュ・バックが、精神病が増悪した現在もあることを窺わせる。但し、流暢な会話やその妄想体系の完璧さ(これは「ターミネーター」の連作に登場する精神科医シルバーマン先生も興味惹かれるに違いない高度の秩序性を保持している)から見ても、これは性格異常としてのパラノイア(偏執病)が強く疑われ、効果的な抗精神薬もなかった昭和初期の精神医学の医療レベルでは予後は悪いと判断せざるを得ない。勿論、芥川龍之介の二重身(ドッペルゲンガー)である。

●「僕」:精神病院を見学に来た人物で、「二」以下の本記録の執筆者。モデルは芥川龍之介自身に仮託した内田百閒であろう。

●「S博士」:主人公「僕」が収容されている精神病院の院長。巣鴨精神病院院長呉秀三か青山脳病院院長にして歌人であった斎藤茂吉がモデルである。

 

○「バツグ」:漁師。最初に出逢い、親しく付き合うこととなる庶民の相応には年をとった河童。既婚。作中、子が出来るが、子は出生を拒否する。他に子があるかどうかは不明であるが、出生を拒否されたシーンでのバックやその妻の反応(妻の感懐は全く描かれない)から、私は既に子がいると判断する(但し、バックの反応を見ると、もしかすると長男や長女も出産を拒否して子は実際にはいない可能性もある)。相応に重い精神病の遺伝的因子を持っている。但し、本人が発症しているかどうかは不明。単なるキャリアである可能性もある。但し、原稿の書き換えから、実はこれは遺伝性精神疾患ではなく梅毒による進行麻痺(麻痺性痴呆)発症リスクを暗に指していることが分かる。狂言回しの重要な役ではあるが、モデルは同定し難い。

○「チヤツク」:若い医師。物質主義者(河童国での限定された謂いであって、ここでは「僕」と違って唯物主義者という意ではないようである)。河童国の特別保護住民に認定された「僕」は河童国滞在中、彼の隣家に居住する。田端文士村に居住した隣人で芥川龍之介及び芥川家の主治医にして、自死の看取りの場にもいた下島勲がモデルと思われるが、家族が描かれておらず、未婚河童の模様で、その点では、「河童」執筆時は既に中年であった下島とは大きく異なる。

○「ゲエル」:資本家。ガラス会社社長。高血圧気味で、毎日チャックに血圧を調べて貰っている。既婚で子持ち。河童国の実質的支配者を自称。田端文士村に居住した芥川のパトロン鹿島組(現在の鹿島建設)副社長鹿島龍蔵をモデルとするか。

○「バツク」の細君:漁師バックの妻。臨月。

○「バツク」の子(胎児):漁師バックの子(胎児)。バックの遺伝由来の精神病(実は梅毒による精神病への恐怖)及び河童という存在を悪と信ずるが故に、出生を拒否する。言葉つきからは男の子と思われる。

○産婆:バックの子の出産シーンで登場する助産婦河童。河童国では助産婦による薬物及び特殊器具を用いた堕胎手術が合法化されていることが分かる。

○「ラツプ」:学生。「僕」がバックと並んで親しくした一河童。詩人トックを紹介した。独身。芥川の最年少の弟子堀辰雄がモデルと考えられる。作中、雌河童に抱き疲れて嘴が腐って落ち、醜い面相となる。生活教教徒であるが、その聖書さえ読んでいない、実際には不信心河童である。妹や弟、叔母を含め、6人家族(但し、これは堀家がモデルというわけではない)。

○「トツク」:詩人。「超人倶楽部」会員。懐疑主義者・無神論者(自身が心霊――但し、霊媒は元女優であり、この心霊が本物であるかどうかは甚だ心もとない。但し、芥川はそうした留保を示しながらも、核心に於いてはこの心霊を実際のトックの心霊として登場させていると考えてよい――として出現しても霊魂の存在に懐疑する程度には頑なな懐疑主義者にして無神論者である)。自由恋愛家(従って未婚)にして厭世主義者。そして超河童(便宜上、「僕」は一箇所を除いて「超人」と称している)。噂では無政府主義者(但し、後に自身で否定する)。作中、自殺する(その直前には精神異常の兆候――幻覚――が見られる)。まずは萩原朔太郎辺りがモデルとも思われるが、本作が「詩人⇔小説家」の互換モデルを頻りに用いているところからは、「小説の鬼」宇野浩二が目されるようにも思われる。また「十」のクラバックの告白の中では、途中からは明らかに芥川龍之介と萩原朔太郎の相互互換的モデルへと変容しており、これ以降、作品の後半では結局、自殺する芥川龍之介の分身の要素が甚だ大きくなる。

○「トツク」の愛人の一人である雌河童:「僕」が初めて訪ねた時、トックの部屋の隅で編み物か何かをしており、後にトックとはクラバックの出る音楽会にも同伴している。河童の雄から見ると大変に美しいこの雌河童はしかし、トックと交際するようになる凡そ十年前、クラバックに懸想し、未だにクラバックを目の敵にしているらしい。この「僕」には美しく見えない、クラバックやトックに纏わりついている雌河童のモデルは、芥川の愛人で後に激しく忌避するようになる「狂人の娘」(「或阿呆の一生」)ストーカー秀しげ子か。なお、後掲する『「トツク」の内縁の妻』も参照。

○彫刻家:超人倶楽部会員。同性愛者である。

○雌の小説家:超人倶楽部会員。超人倶楽部でアプサント酒を飲み過ぎ、急性アルコール中毒で頓死する(「往生」という語を昏倒の比喩の意味に解するなら死んではいないかも知れない。しかし職工屠殺法などを見れば判る通り、河童国では死に対する観念はヒトのそれとは必ずしも一致はしないので実際に死んだものと私は捉える)。酒好きで酒癖が悪い当時の女流作家に、ぴったりなモデルがいそうな気がし、同定の誘惑には駆られる。

○「ラツプ」をストーカーする雌河童:背が低い。ダブル・キャストでストーカー秀しげ子をモデルとするか。

○「マツグ」:哲学者。河童は勿論、「僕」から見ても非常に醜くい形相をしている醜河童(ぶかっぱ)。独身。室生犀星がモデルと思われる。詩人トックの隣りに住んでいる。

○「クラバツク」:著名な作曲家にして詩人。芸術至上主義者。原モデルは山田耕筰か。実際にはダブル・キャストで萩原朔太郎を感じさせ、後にはトックと同じく芥川龍之介と萩原朔太郎の相互互換的モデルとしても機能しているように感じられる。未婚か既婚かは不明。

○警官:音楽会でクラバックの演奏中、「演奏禁止」を宣告する。異様に身長が高い。マッグの謂いから推すと、既婚者の可能性が高い。

○「ゲエル夫人」:ゲエルの妻。ライチの実に似ており、河童国ではそれが美人のポイントであるらしい。

○「ゲエル」の子:河童の好物とされる胡瓜に似ている。

○「ペツプ」:裁判官。未婚か既婚かは不明。愛煙家である。作品のラスト・シーンで、失職の果てに発狂、精神病院に収容されていることが明かされる。これは芥川龍之介の義兄で執筆直前に鉄道自殺した西川豊をモデルとしているように思われる。

○書籍工場会社技師:「僕」の同工場の書籍製造過程見学を案内する。

○「ロツぺ」:内閣総理大臣、クォラックス党総裁。モデルは当時の内閣総理大臣若槻禮次郎と思われる。「僕」とゲエルとの会話の中で語られる河童で実際には登場しない。

○「クイクイ」:左翼系の『プウ・フウ新聞』社社長。しかし実際には資本家ゲエルから後援(資金援助)を受けて操られている。ゲエルの話の中で語られる河童で実際には登場しない。芥川龍之介が社員であった毎日新聞社がモデルだとすると、時代的なズレがあるものの、原敬辺りがモデルであろうか。

○獺国のビップ獺:河童国に在留していた獺国籍の異国生物であるが、叙勲された獺国のビップであった。誤って殺害されて、そのことがカッパ・カワウソ戦争(やぶちゃん仮称)の発端となった。ゲエルの話の中で語られる河童で実際には登場しない。

○獺の知人である河童夫婦:夫は道楽者で、妻は秘かに生命保険をかけた夫の殺害を企んでいたが、毒殺するための青酸カリ入りのココアを、誤って来訪していた先のビップ獺に飲ませてしまい、殺害、これがカッパ・カワウソ戦争の発端となった。その詳細な叙述から見ると少なくとも、この夫の河童には特定モデルがあるものと思われる。ゲエルの話の中で語られる河童で実際には登場しない。

○「ラツプ」の母:ラップと同居している。ラップより妹を可愛がっている。ラップの話の中で語られる河童で実際には登場しない。

○「ラツプ」の叔母:ラップと同居している。ラップの母と仲が悪い。ラップの話の中で語られる河童で実際には登場しない。

○「ラツプ」の父:ラップと同居している。アル中で、相手構わず直ぐに暴力を揮う。ラップの話の中で語られる河童で実際には登場しない。

○「ラツプ」の弟:ラップと同居している。不良少年。ラップの話の中で語られる河童で実際には登場しない。

○「ロツク」:クラバックが内心、自分を越えていると感じている孤高の音楽家。芥川龍之介をクラバックとする位相からは志賀直哉がモデルと思しい。但し、クラバックの言説(ディスクール)の中では、明らかに芥川龍之介と萩原朔太郎の相互互換的モデルになっている。この河童は重要な人物であるのだが、会話の中に名前のみ現れるばかりで、実際には登場しない。

○「グルツク」に職務尋問する警官:「僕」の通報告発を受けて、窃盗罪のグルックに職務尋問するが、河童国刑法1285条に則り、グルツクを解放する。

○「グルツク」:「僕」の万年筆(原稿では当初は銀時計である)を子供の玩具にするために盗んだ河童。ガリガリに痩せている。既婚で子持ち(作中時間内で死亡)の貧民。モデルは芥川の不倫相手であった秀しげ子と同時に関係を持っていた龍門の四天王の一人南部修太郎か。

○「トツク」の内縁の妻:トックの自殺現場に居合わせる。これは前掲の「トックの愛人の一人である雌河童」と同一河童とも読めないことはないのだが、もし同一河童であったなら、クラバックは彼女が嫌悪しながらも今も何処かで惹かれいる相手であるはずであるが、駆けつけたクラバックとの間に何らの描写もないところから、私は別な雌河童ととる。

○「トツク」の私生児:2~3歳。トックの自殺現場に母と共に居る。前掲の内縁の妻とトックとの間の子。トックは自由恋愛家であるから、当然、認知していないものと思われる。男児か女児かは不明であるが男児であろう(そうしたい根拠は注を参照されたい)。芥川也寸志がモデルであろう。

○長老:近代教(生活教)の大寺院に居住しているところを見ると、ただの信徒ではなく、高位の近代教の伝道師である。しかし、作中、実際には生活教を信じていないことを「僕」とラツプに告解する。既婚で、妻の尻に敷かれている恐妻河童。

○長老の妻:巨体にして強力(ごうりき)の雌河童。

○「ペツク」:心霊学協会会長。写真家のスタジオとなったトックの元家で、降霊実験を行う。モデルは「千里眼事件」で知られる東京帝国大学助教授福来友吉か。「心霊学会報告」の文中に登場するのみ。

○「ホツプ夫人」:霊媒師。心霊学協会員。元女優。自らにトックの霊を降霊させる。モデルは「千里眼事件」の超能力者御船千鶴子又は長尾郁子か。「心霊学会報告」の文中に登場するのみ。

○街はずれ住む老河童:数え年12~13歳にしか見えないが、実際は115~116歳。「僕」に人間世界に戻る唯一つの路(繩梯子)を教える隠者の風格を持った河童。独身と思われる。「杜子春」の鐵冠子の生まれ変わりのような印象を持つ。

○「ラツク」:本屋。かつてのトックの内縁妻が現在結婚している相手。片目が義眼であるらしい。当初の設定は弁護士である。名前のみで実際には登場しない。

以下、各章ごとに注釈してある。乞う、ご期待!

【2010年12月11日AM9:24 追記:その後、加筆を施したので、「登場河童一覧」を全面的に差し替えた。

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