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2012/01/21

ジョン・ミリングトン・シング著姉崎正見訳「アラン島」(10)

 此の島の砦の丘(ダン)[やぶちゃん注:「砦の丘」に「ダン」のルビ。]即ち異教徒の城砦の最大の一つが、私の宿から手のとどくほど近くにある。私は卵や鹽豚の御馳走の後、石の上で、うつらうつら煙草を吹かしに、よく其處へ登る。村の人は私の此の習慣を知つて、或る者は始終ぶらぶら上つて來ては、私が近頃受取つた新聞に何か變つた事あるかと聞いたり、アメリカの事に就いて質問したりする。誰も來なければ、フィル・ボルグ族〔愛蘭土に於ける傳説上の古代民族の一つ〕の触つた石を、開けた本の重しにして、太陽のぬくみの中でいい氣持で何時間も眠る。此の二三日、私は此の丸い石垣の上に殆んど棲んでゐる。その譯は、計算がはづれたのか、泥炭がなくなり、乾した牛糞――島で普通の燃料――で火をつないだので抽煙が私の部屋に洩れはひり、机の上にも寢床の上にも靑い層となつて溜まつてしまつたからである。
 幸ひなことには天氣がよいので、日向で日を暮す事が出來る。此の石垣の頂から見渡すと、殆んど四方の海が見え、北と南の方は遙かに延びて遠い山脈へ續く。私の足下、東の方には島の人家のある一つの區域が見え、其處には赤い色の人影が小屋の邊をうろついてゐて、時時、きれぎれに話聲や古い島の歌が聞こえて來る。

One of the largest Duns, or pagan forts, on the islands, is within a stone's throw of my cottage, and I often stroll up there after a dinner of eggs or salt pork, to smoke drowsily on the stones. The neighbours know my habit, and not infrequently some one wanders up to ask what news there is in the last paper I have received, or to make inquiries about the American war. If no one comes I prop my book open with stones touched by the Fir-bolgs, and sleep for hours in the delicious warmth of the sun. The last few days I have almost lived on the round walls, for, by some miscalculation, our turf has come to an end, and the fires are kept up with dried cow-dung--a common fuel on the island--the smoke from which filters through into my room and lies in blue layers above my table and bed.
Fortunately the weather is fine, and I can spend my days in the sunshine. When I look round from the top of these walls I can see the sea on nearly every side, stretching away to distant ranges of mountains on the north and south. Underneath me to the east there is the one inhabited district of the island, where I can see red figures moving about the cottages, sending up an occasional fragment of conversation or of old island melodies.

[やぶちゃん注:「砦の丘(ダン)」原文“Duns”。ここはゲール語で“Dun Conor”(ドゥン・コナー)と呼ばれる城砦で、有名なイニシュモア島の巨大な砦“Dun Aonghasa”(ドゥン・エーンガス)に次ぐ大きな、西暦一世紀頃の城築とされるものである。この城の名はシングが言うように、伝説上の「フィル・ボルグ族」の族長であったエーンガスの弟コナーに因むものである。アラン諸島随一の美景の地で、シングは特にこの砦を好み、その“Dun Beag”(ドゥン・ビョグ)という砦の近くの断崖に腰を下ろしては瞑想に耽っていたと伝えられ、現在、その場所の石は“Cathaoir Synge”(カハー・シング)「シングの椅子」と呼ばれている。この小さな章はそうしたシングの心からの憩いの瞬間を伝える風と海と唄声のソネットのように私には聴こえる。]

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