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2012/01/29

ジョン・ミリングトン・シング著姉崎正見訳「アラン島」(14)

 吹きまくる霧の一週間は終つたが、私は妙に流し者の淋しい氣持になつた。殆んど毎日島の中を歩き廻つたが、濕つた岩の群と細長い波と荒れ狂ふ波の騒ぎの外には何も見る事は出來ない。
 スレート質の石灰岩はその上に滴る水で黑ずみ、どちらを向いても、狹い間に重り合ひ捲き合ひしてゐる同じやうな暗澹たる心のつきまとひ、石垣の荒い岩目に叫び咽ぶ同じやうな悲しい音ばかりである。
 初め、人人は周圍の荒涼たる有樣に對しては氣も留めないでゐるが、數日たつと彼等の聲は茶の間でも滅入ってしまひ、豚や牛のことを果しなく話てゐるのが、化け物屋敷で話してゐる人たちの囁き聲のやうに低くなる。

A week of sweeping fogs has passed over and given me a strange sense of exile and desolation. I walk round the island nearly every day, yet I can see nothing anywhere but a mass of wet rock, a strip of surf, and then a tumult of waves.
The slaty limestone has grown black with the water that is dripping on it, and wherever I turn there is the same grey obsession twining and wreathing itself among the narrow fields, and the same wail from the wind that shrieks and whistles in the loose rubble of the walls.
At first the people do not give much attention to the wilderness that is round them, but after a few days their voices sink in the kitchen, and their endless talk of pigs and cattle falls to the whisper of men who are telling stories in a haunted house.

[やぶちゃん注:「妙に流し者の淋しい氣持」“strange sense of exile and desolation”。“exile”の「流し者」は「流刑に処せられた者」という意味で、“desolation”は「荒蕪地・荒寥地方」であるから、「荒涼たる地の自然と流刑者の人事といった異様な寂寥の気持ち」といったニュアンスであろう。私は本節の姉崎氏の畳み掛けた有機的な荒々しい日本語表現が好きだ。]

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