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2012/05/15

小山白哲老師 藪野直史伝授 宇宙創造之仏説 (肉筆)

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「鎌倉攬勝考」巻之一のテクスト化の中で、名越切通に辿り着いた。既に「新編鎌倉志」巻之七で注しているが、今回、とんでもないものを発見したので、それを電子化して附すことにした。

それは――

僕が二十一歳の時、まだ今のように整備されていなかった名越切通を踏破して、辿り着いた「妙行寺」の小山白哲老師から「伝授」された、宇宙創造の真相を語る直筆である――今読んでみても、こりゃ、凄いわ……

 現在はネット上で見ると美事に史跡整備がなされて、一般的なハイキング・コースにさえ指定されているようであるが、今から三十数年前は詳細な鎌倉市街地図でも「名越の切通」のルートは途中で点線になって最後には消えており、ガイドブックでも踏査は難易度が高いと記されていた。二十の時、私はとある梅雨の晴れ間に、ここの踏査を試みたことがある。意を決して古い資料にある古道痕跡の横須賀線小坪トンネル左外側を登るには登ったものの、その先には一切の踏み分け道もなく、鬱蒼とした八重葎――むんむんする草いきれの中、汗と蜘蛛の巣だらけになって小一時間山中を彷徨った。それでも時々見え隠れする地面に露出した明らかな人工の石組みに励まされた。「空峒」と思しいスリットのような鎌倉石の狭隘や掘割に出て、最後はまんだら堂に導かれ、今は取り壊された妙行寺の、拡声器で呼び込まれた(人が通ると何らかの仕掛けで分かるようになっており、住職自らがマイクで呼び込むのである)。そこで今は亡き老師小山白哲の奇体なるブッ飛んだ説法(地球儀を用いつつ、実に何億劫も前の宇宙の誕生から始まる非常に迂遠なもの)を延々と一人で聞かされた。たっぷり四十分はかかったが、頻りに質問などもしたせいか、老師には痛く気に入られ――「思うところがあったら、是非この寺へ来なさい、来る者は拒みませんぞ」――と言われたのを思い出す。そうして――「菖蒲が綺麗に咲いておる。見て行きなさい」――と言われた。……凄かった……グローブ大の、袱紗のような厚みを持った紫の大輪の菖蒲の花が、海原のように広がった紫陽花の海浮いていた……弟子らしき作業服の老人が菖蒲畑の手入れをしていたが、僕を見て――「和尚の話は退屈でしょう。よく耐えたねえ」――と声をかけられた。……そうして私は、初めて見る美事な多層のやぐら群や、住職が勝手に纏めてしまったり動かしたりした結果、史料価値が優位に下がったと噂される五輪塔群を一つ一つ眺めては、また一時間余りを過ごした。最後に寺の山門への坂の上で、和尚とさっきの御弟子が話しているのにぶつかった。聴こえてきたのは、先程の説法とは打って変わった……「テレビの撮影の予定は……」……「雑誌の取材の件じゃが……」……というひそひそ話であった。老師は、僕がまだいたのにちょっとびっくりして「まだおられたか。どうじゃった?」と聞かれ、僕が「やぐらとたいそう立派な菖蒲に感服致しました」と答えると、「そうかそうか」と微笑まれて私に合掌され会釈された――僕は生まれて初めて人に合掌と会釈を返し――山を降りた……それからすぐのことである……『鎌倉の隠れた花の寺』と称してまんだら堂の菖蒲や紫陽花が一躍ブレイク、老若男女の大集団があそこを日参するようになったのは……あそこで僕が見たのは……仙境と俗世の境の幻だったのかも知れない……今はもう……遠い遠い、懐かしい思い出である……
 最後に。ただ注を再掲するのも芸がない。先日、教員を辞めて書斎の整理をするうちに、実はこの時、小山白哲老師が直筆で書いて下さった驚天動地の宇宙創造説を発見したので、それを画像と電子テクストで御紹介し、今は亡き老師を偲びたい(大きい巻紙なので、画像はずらしながら四枚で全文を示した。不遜乍ら誤字と思われるものは後に[]で正字を示させて頂いた。判読不能の字は□とした)。

[小山白哲老師 宇宙創造之説(肉筆)]

(表)
  壞劫に爆発し空劫と
  なる百七十二億八千万年の
  生命がある 地球は成劫四月
  八日に火球体化し成劫二十劫
  年間は太陽が放出した
  水輪が火球体の上空を雲
  になって施[旋]回し成劫二十劫八十
  六億四億千万年の最終に雲
  爆裂的に地球に落下し
  たその一せつ那に塩が発生
  し水も空気も海も河も
  ある地球が完生[成]
  八十六億四千万年の生命がある
  生物が住劫四月八日である海に
  生物が住むこと八億六千四百
  万年
(裏)
  妙  法  蓮  華  経
  ┃  ┃  ┃  ┃  ┃
 □空輪 風輪 火輪 水輪 地輪 五輪

(ここに五輪塔の絵) 五大種

  全宇宙と地球人体生物
  悉を構成する
  生物が住む国が
  七十二桁ある
  照す太陽も七十二桁
  一つ一つの太陽系は
  二百八十万億の諸星
  がある  小山白哲

        二[七]十八年七月八日

……老師よ、私が師の説法を受けたのは、七月八日のことだったのですね……あの時、二十一歳だった私は五十五になりましたが、……全宇宙に七十二桁という天文学的な数の知的生命体が生きているという老師の言葉に……私は素直に感動し、そんな愚な私をまた、気に入って下さった老師よ……また、どこかで……数十劫経ちましたなら、お逢いしとう、存じます。……

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