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2012/08/08

生物學講話 丘淺次郎 吸著の必要~(1)

    一 吸著の必要

 

 寄生生活に第一に必要なものは吸著の器官である。宿主生物の體の表面に附著する場合にも、腸や胃の内に留まる場合にも、吸著の力が足らぬと忽ち振り離され、または押し出される虞があるが、寄生生活をする生物が宿主から離れたのは、猿が樹から落ちたのよりは遙に憐で到底命は保てぬ。されば、如何なることがあつても宿主に離れぬやうに、確に吸ひ著いて居ることは寄生生活の第一義であるが、そのために用ゐられる器官は吸盤と鉤とである。同じ仲間の動物で獨立の生活をして居るものと、何かに寄生して居るものとを竝べて比較して見ると、後者の方に吸著の器官の著しく發達して居ることが直に知れる。例へば魚類では寄生するものは一般に少いが、「やつめうなぎ」の類は他の魚類の皮膚に吸  ひ著いて肉を食ふから、まづ寄生生活に近いものである。そしてその口は普通の魚類の如く上下顎を具へて嚙むのではなく、單に圓く開いて恰も煙管の雁頸の如く、物に吸ひ著けば、「たこ」の足の疣(いぼ)と同じやうで容易に離れぬ。これを普通の魚類の口の構造に比べると、吸著に適することに於ては雲泥の違ひがある。

Yametuunagi

[やつめうなぎ]

 

[やぶちゃん注:画像のキャプションは「やめつうなぎ」となっている。訂した。

「吸著」今までも出てきているのだが、「著」は嘗ては「着」と同字として用いられることが一般的に行われていた。無論、「著」の音は「チョ」で「チャク」という音はないが、「着」の同字として用いる際には「チャク」と読んだ。

「やつめうなぎ」脊椎動物亜門無顎上綱円口綱ヤツメウナギ目 Petromyzontiformes に属する原始的な魚類の総称。顎を欠き、対鰭を持たず、骨格が未発達である点、通常の魚類やヒトを含む顎口上綱 Gnathostomata の脊椎動物群から見ると「原始的」なのである。図鑑などで、円形のグロテスクな吸盤状口器で魚の腹に吸い付いき吸血をしたり、ヤスリ状の舌で組織を溶かして採餌するまがまがしい印象が強いが、これはカワヤツメ Lethenteron japonicum などの特徴で、実際には成魚になると吸血する種と全く吸血しない種に分かれ、実は多くのヤツメウナギ類は消化管も貧弱で餌を採らない。名称と形状の類似(実際には大いに異なる)からウナギ類と同類と思われがちであるが、ウナギはヒトと同じく顎口類に属する一般的魚類である条鰭綱ウナギ目ウナギ亜目ウナギ科ウナギ属 Anguilla で、ヤツメウナギとは全く異なった種である。]

 「ふなむし」は海岸の岩の上や船の中などを活潑に走り廻つて容易に捕へられぬ程故、その七對ある足は相應に長いが、尖端が細く眞直であるから物にかぢり著くことは出來ぬ。これに反して、鯛そのほかの大きな魚の口の内などに吸ひ著いて居る小判形の蟲は、「ふなむし」と同じ仲間の動物であるが、足は七對ともに太くて短く、爪は鉤狀に曲つて先が尖つて居るから、しがみ著いて居ると答易には離れぬ。この蟲と「ふなむし」とを竝べて比較して見ると、體の形狀も節の數も足の數も足の節の數もすべて同じであるが、一方は獨立して走り歩き、一方は他動物に寄生して居るだけの相違で、かやうに吸著の仕掛けが違ふ。「ふなむし」の類には種々寄生の程度の異なるものがあるが、これらを順に見渡すと、吸著の裝置が一歩一歩完全になる有樣が明に知られる。

Hunatai_2

[やぶちゃん注:左に「ふなむし」、右に「小判蟲」のキャプション。何れの本種をも知らない読者から見ると、左右は逆の方が親切である。]

 

[やぶちゃん注:「ふなむし」甲殻綱等脚(ワラジムシ)目ワラジムシ亜目フナムシ科フナムシ Ligia exotica。因みに、学名の属名“Ligia”はギリシャ神話で岩礁に巣食い舟人を死へと誘い込む半魚人(本来は半鳥人) セイレンの仲間リギアに基づき、種小名“exotica”はラテン語で、異国の、風変わりな、の意。……異形の人魚リギア……いいじゃない!

「鯛そのほかの大きな魚の口の内などに吸ひ著いて居る小判形の蟲」図のキャプションには「小判蟲」とするが、これはご存じない方が多いであろう(人によっては、あんまり知りたくもなく、見たくもないかも知れない)甲殻亜門軟甲綱真軟甲亜綱フクロエビ上目等脚(ワラジムシ)目ウオノエ科 Cymothoidaen に属する寄生性甲殻類の仲間、中でも本邦では漁師などには比較的知られている種としてのタイノエ Rhexanella verrucosa 及びその仲間、また丘先生のキャプションの「小判蟲」からは同科のウオノコバン属 Nerocila 指している。和名は「魚の餌」「鯛の餌」である。以下、ウィキウオノエ」より引用しておく。『アジ、タイ、サヨリなどの魚の口内やえら、体表面にへばりつき、体液をすう。宿主の魚の口内に入り込む方法として、食料に見せかけて魚に食われたふりをし、口内に入り込み、口内の一部を壊死させそこに住み着き、体液を吸う』。『主の魚が死ぬと離れるため、釣った魚をいれておいたクーラーボックスの水の中で泳いでいるのを見つけることもある。スーパーマーケットに売っている魚でも、まれに口からウオノエが覗いている場合もある。ただし、人の目には気付きにくく、主に魚の口内に入り込んでいるため、誤って食すことも無い。人に寄生することもない』。『日本におけるウオノエの研究はあまり進んでおらず、種類や宿主などについては不明な点が多い。このため、広島大学などではウオノエを見つけたら送ってほしいと呼びかけている』。まんず、海にいるワラジムシ、エビ・カニの遠い親戚だと思えばよい。広島大学の学術的資料の提供のために、一つ、意識的に探してみるのも一興であろう。……だが……魚の口の中にいる画像などは、結構、エイリアンぽい(クリックは自己責任で。とかにある。後者は抽出個体のアップの方が結構、くる、かも。ブログ主も表題で示されているようにこれは明らかにタイノエ Rhexanella verrucosa と思われる)。]

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