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2012/08/10

生物學講話 丘淺次郎 一 吸著の必要~(3)/了

 「さなだむし」や「ヂストマ」は寄生蟲の模範ともいふべきものであるが、皆固著の器官が發達して居る。「さなだむし」の方には種類によって或は吸盤或は曲がつた鉤、或は吸盤と鉤とが頭の端にあつて、これを用ゐて腸の粘膜に附著して居る。また「ヂストマ」の方は、腹面の前方に二個の吸盤が縱に竝んで居るが、これを以て同じく粘膜などに吸ひつく。漢字で二口蟲と書くのは、二個の吸盤が口の如くに見えるからである。

Saadamusi

[「さなだむし」の頭]

 

[やぶちゃん注:「さなだむし」扁形動物門条虫綱単節条虫亜綱 Cestodaria 及び真正条虫亜綱 Eucestoda に属する寄生虫。名は形状が真田紐に似ていることに由来する。個体によっては一〇メートルを超えるものもいる。本邦では古くは「寸白」(すはく/すばく)と呼ばれていた。目黒寄生虫館大好き人間の私はこの手の真正寄生虫の話を始めると、実は止まらなくなって、本文テクスト化が先へ進まなくなる。意識的にストイックにこの辺で止めるが、一つ面白いサイトを紹介しよう。しばしば聴かれる噴飯の都市伝説である有名女優などがやったとされる「サナダムシ・ダイエット」……ところが……何と! 実際にそのために多節条虫亜綱擬葉目裂頭条虫科 Diphyllobothrium 属日本海裂頭条虫 Diphyllobothrium nihonkaiense の、その幼虫を販売している「サナダムシ復興委員会」なるページが存在した! 中国・ロシア海域のサクラマスから採取した(厳粛なるサクラマス解剖、その採取方法の独立写真入りページもあるぞ!)procercoid プロセルコイド(擬葉目裂頭条虫科の条虫類のライフ・サイクルの一ステージ。前擬尾虫。第一中間宿主であるケンミジンコ内で coracidium コラシジウムが発育してプロセルコイドとなり、第一中間宿主とともに第二中間宿主にこれが摂取されて、第二中間宿主内で plerocercoid プレロセルコイド〔擬尾虫/擬充尾虫〕を経、成虫となる)……そしてその販売価格は――二〇一二年八月現在、何と! 四万八千円也!……更に、おまけを附けた。……この幼虫を実際に購入して『ダイエットのために服用』してみた(!)という夫婦の、写真入り実録顛末物(サイト「探偵ファイル」――このサイト、以前、自殺した少女への性的虐待の疑惑で音楽教師を告発した際には、マジ、リキ、入ってたんだけどなあ……)も発見、最後には目黒寄生虫館の見解(「四万円という額が妥当かどうかは分からないけど、常識的に考えて、売るものではない」「そもそも一匹飲んで、一〇〇%確実に寄生するものではない。そんなに簡単に寄生したら大変」)も示されて、これはもう、必見中の必見だ! 惜しむらくは、カプセルから出して、プロセルコイドを視認した写真が欲しかった!……なお、本邦産のサナダムシはヒトとの共存型で、その形状のグロテスクさに反し、多数個体が寄生しない限りは人体への影響は殆どなく、従って、無論、ダイエットにもならないのである。――丘先生じゃないが、サナダムシこそ真正の『模範的の寄生蟲』とは言えまいか?

「ヂストマ」扁形動物門吸虫綱単生吸虫(単生)亜綱 Aspidogastrea 及び二生吸虫(二生)亜綱 Digenea に属する「吸虫」と呼称される寄生虫類の本邦での総称。本文にある通り、「二口虫」と呼ぶ理由は、口吻を取り囲んである摂餌を助けるための口吸盤と、体を寄生部位に固定するための腹吸盤(体部前方の口吻に近い腹面に位置し、口吸盤とほぼ同じ大きさ)の両方を口と誤認して、“di”(二)+stoma(口)と呼んだもの。但し、英語の“Distoma”は、二生吸虫(二生)亜綱棘口吸虫目棘口吸虫亜目棘口吸虫蛭状吸虫(カンテツ)科蛭状吸虫亜科カンテツ属 Fasciola に属する肝蛭(かんてつ)類に限って用いる。吸虫類は肺吸虫症・肝吸虫症などを引き起こす厄介な寄生虫である。]

 かくの如く寄生動物には吸著の器官が發達して、如何なることがあつても決して宿主動物を取り逃さぬやうに出來て居るが、その代り運動の器官は甚しく退化するを免れぬ。前に比較した獨立「だに」と「ひぜんのむし」〔ヒゼンダニ〕とでも、「ふなむし」と鯛の口の小判蟲〔タイノエ〕とでも、吸著の仕掛けの進んだ方は運動の力は衰へて居る。蓋し寄生動物は、後生大事に宿主動物にかぢり著いて居さへすれば生活が出來るから運動の必要がないのみならず、少しでも自由の運動を試みれば、宿主動物との緣が切れる虞があって生活上頗る危險であるから、自然必要な器官が發達し、不必要な器官が退化して、爪は大きくなり、足は短くなるといふやうな結果を生じたのであらう。種々の程度の寄生生物を通覧すると、吸著器官の發達と運動器官の退歩とは常に竝行し、兩方とも寄生生活の程度と比例して居るやうに見える。即ちときどき寄生するものや、半ば寄生するものには、運動の器官がなほ具はつてあるが、宿主動物から離れぬやうになれば、吸著の器官が完備して運動の器官がなくなり、「さなだむし」や「ジストマ」の如き模範的の寄生蟲になると、自由運動の力は全く消滅してしまふ。

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