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2012/10/11

生物學講話 丘淺次郎 第五章 食はれぬ法 (二)隠れること~(2)ニオガイ/イシマテ

 敵の多い世の中に、全身を露出して居ることは餘程不安の感じを起こすものと見えて、海産動物を飼養する場合に、もし砂や石塊を入れて隱れ家を造つてやると長く元氣に生活するが、たゞ水ばかりの中に入れて置くと、暫く的(あて)なしに匐ひ廻つた後に段々衰弱して死ぬものが多い。動物を採集に行つた人は誰でもよく知つて居る通り、現れた處のみを探しては何も居らぬやうなときにも、石を覆し、泥を掘り、皮を剝がし、枝を打ちなどすると、意外に多くの動物が出て來る。海の底から取つて歸つた石を海水に漬けて置くと、二、三日過ぎて水が少し腐りかゝるころになつて、初め見えなかつた蟲が澤山に匐ひ出すことがあるが、これは石の穴のなかに隱れて居たのが苦しくなつて、出て來るのである。特に不思議に見えるのは、岩に穴を穿つて、そのなかに生きた貝が、嵌り込んで居ることで、「しゞみ」や「はまぐり」と同類の二枚貝が如何にして岩石に孔を穿ち、その固く嵌つて取り出せぬやうになるかは、餘程ほど詳しく研究せぬと明にならぬ。處によると海岸の岩に一面に孔があつて、中には「にほ貝」といふ貝殼の薄い貝が一疋づつ居る。また海岸の岩を破ると、中から「石食ひ貝」または「石まて」と名づける、椎の實を長くした如き形の貝が澤山出て來るが、これらは自分で穿つた孔の中に隱れて居たものである。「にほ貝」は夜光を發するから、イタリヤの漁夫の子供らはこれを嚙んで口中を光らせ、暗い處で人を驚かして戲れる。

Isikuigai

[石食ひ貝]

[やぶちゃん注:「にほ貝」二枚貝綱異歯(ハマグリ)亜綱マルスダレガイ(ハマグリ)目ニオガイ上科ニオガイ科ニオガイ(鳰貝)Barnea manilensis。「鳰」はカイツブリ目カイツブリ科の水鳥カイツブリ Tachybaptus ruficollis の古名で、貝の輪郭がカイツブリを連想させることに由来するとも言われるが、余り似ているようには思われない。ニオガイ科の貝類は多くは白色で両殻が膨らみ、前端や後端は開いているが、特に前端部には石灰質の被板が出来る種が多く、それらでは殻の表面の前部には放射肋が出るか若しくは成長脉(みゃく)がおろし金状になって後部と明白に区別される。靭帯や鉸歯(こうし:“hinge teeth”は貝殻の蝶番部にある歯で二枚貝では大きな分類学的特徴を現わす。)もない。殻の内面は殻頂の下から棒状突起が出ており、殻の背や復部側に複数の石灰版が出来る場合もあるが活動時には容易に失われる。多くは砂泥岩に穿孔して棲息している。本邦産は八属十二種(但し、以上の記載及び後のニオガイの記載は主に昭和三六(一九六一)年保育社刊波部忠重「続原色日本貝類図鑑」に基づいたので産種数などは増えている可能性がある)。ニオガイは潮間帯から水深一〇メートルまでの岩に穿孔して生息する。殻は白色で薄く、殻長約七センチメートル、殻高・殻幅共に約二・五センチメートルで、前後に細長く殻頂は前方に寄る。殻前部は細く尖り、成長脉と放射肋とが交わって弱い刺状になっており、これを用いて物理的に泥岩を削って穴を開けてそこを棲管とする。南方の個体は大きく棘も強いが、北方では小形になる。左右の殻は広く開いており、生貝ではここから軟体部の太い斧足を出し、この足で穴中に固着、殻を回転させながら穴を開ける(以上の大きさのデータと掘削行動については個人の図鑑「そらいろネット」の「ニオガイ」を参照した。リンク先には画像もある)。

『「石食ひ貝」または「石まて」』は二枚貝綱翼形亜綱イガイ目イガイ科イシマテ LithophagaLeiosolenuscurta。異名イシワリ。殻は前後に細長く円筒形を呈し、靭帯の後端背部の縁で僅かに高まる。殻表面は褐色、成長脉のみで外に外形的特異性は認められないが、所々に石灰層を付着している。石灰層は後端で厚くなり、且つ殻の端より少し延長されており、腹面方向では縦に襞状に刻まれている。内面には歯も内縁の刻みもない。本類は珊瑚礁や岩石に穿孔して棲息、甚だしいものでは同種の他の個体の殻にさえ穿孔する。岩礁性海岸に無数の小孔を見るが、これは『本類その他、スズガイ、ニオガイ、カモガイなどの穿孔したものであり、多くはこれら岩礁を割って採集する』(保育社刊昭和四九(一九七四)年改訂版吉良哲明「原色日本貝類図鑑」より)。

『「にほ貝」は夜光を發する』ウィキの「オオノガイ目」Myoidaによれば、『二枚貝類としては珍しい発光性の種を含み、ツクエガイ科のツクエガイやニオガイ科のヒカリカモメガイ Pholas dactylus、ヒカリニオガイ Barnea candida などが発光液を分泌して細胞外発光をすることが古くから知られている』(目が異なるが、以上の記載にはこのオオノガイ目は分子系統解析から単系統ではないとの研究結果もあり、将来的には所属する科が変わったり、分類階級が目以外のものになる可能性もあると記されている)。]

 

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