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2012/11/05

生物學講話 丘淺次郎 第五章 食はれぬ法 三 防ぐこと~(2)

 介殼が厚ければ、敵を十分に防ぐといふ利益がある代りに、その重い目方のために、運動が非常に妨げられるといふ不便を忍ばねばならぬ。されば貝類はすべて運動の遲いのが常で、よく進行の遲い譬に用ゐられる「かたつむり」などは、貝類仲間ではなほ速い方の部に屬する。「しやこ」の如き重いものは、一定の場處に停まつて全く動かぬ。海岸の岩石には「かき」や「へびがい」が一面に附著して居るが、いづれも厚い介殼を唯一の賴りにして敵の攻撃を免れて居る。「かき」の方は鰓で水流を起して微細な餌を集めて食ひ、「へびがひ」の方は、粘液を出して微細な餌をこれに附著せしめ、粘液と共にこれを食ふ。「へびがひ」は「さざえ」などと同樣卷貝であるが、介殼の卷き方が極めて不規則である上に、岩の表面に固著して居るから、これを貝類と思はぬ人が多い。なほこれらの貝類の他に、「ふぢつぼ」や「ごかい」の石灰質の堅い管を造る蟲などが澤山に附著して居るが、これらは動物の種類が全く違ふに拘らず、敵を防ぐ方法が一致して居るために、外觀にも習性にも固著貝類に餘程似た所がある。それ故、少し古い書物には「ふぢつぼ」をいつも「かき」などと同じ貝類の仲間に入れてある。また石灰質の管を造る蟲の方は、初めて海岸へ採集に行く人がしばしば「へびがひ」の類と混同する。

[やぶちゃん注:本段落に出現する海岸動物については、分類学的な異種性を確認して頂くために特に一般的なものも含めて簡略的に示しておく。

「かき」軟体動物門二枚貝綱ウグイスガイ目イタボガキ科 Ostreidae に属する貝類の総称。

「へびがい」狭義には、

軟体動物門腹足綱前鰓亜綱盤足目ムカデガイ科に属する巻貝 Serpulorbis 属オオヘビガイ Serpulorbis imbricatus

などを指すが、一般的な認識の中では形状からは、同目ミミズガイ科に属する巻貝ミミズガイ Siliquaria (Agathirses) cumingi なども「ヘビガイ」と通称される範囲に含まれるであろう。

オオヘビガイ Serpulorbis imbricatus は北海道南部以南を生息域とし、沿岸の岩礁などに群生する。螺管が太く一二~一五ミリメートルに達し、最初は右巻きであるが、後は不規則に巻いて他物に固着する。和名は恰も蛇がとぐろを巻いているように見えることがあることに由来する。表面は淡褐色で結節のある螺状脈と成長脈を持つ。殻口は円形を成し、口内は白色で蓋はなく、潮が満ちて来ると、蜘蛛のように殻口から粘液糸を伸ばして有機性浮遊物を捕捉、摂餌する。その様子は大分の釘宮均氏のダイビング・サービス「Hip Diving Service」のHPにある「大分の海で見られる生き物図鑑」の「オオヘビガイ」のページでご覧あれ。……因みに、このページの下にある解説は……十年ほど前、私が同定して釘宮氏に送った文章である。

ミミズガイ Siliquaria (Agathirses) cumingi はオオヘビガイよりも遙かに小さく螺管は六~七ミリメートル以上には太くならず、初めは徐々に増大して小さく巻き込むが、その後方は巻き方が大きくなり、幾分曲った直管になる。螺管自体は巻くものの密着することはなく、従って層を形成しない。縦の螺脈の成長襞も不規則である。蓋は角質の円形で厚く縁取られており、中央は折り畳み状に螺旋している。多くは海綿の体内に棲息し、しばしば微少貝類に交じって打ち上がったものを採取することが出来る(以上の貝類学的記載は主に保育社昭和三四(一九五九)年刊の吉良哲明「原色日本貝類図鑑」に拠った)。

「ふぢつぼ」節足動物門甲殻亜門顎脚綱鞘甲(フジツボ)亜綱蔓脚(フジツボ)下綱完胸上目無柄目フジツボ亜目 Balanina に属するフジツボ類の総称。あの富士山型の殻板の中にエビが逆立ちしていると考えて貰うと、エビ・カニ類の近縁であるということがイメージし易いであろう。

『「ごかい」の石灰質の堅い管を造る蟲など』、細かいことを言うと、ここはやや文章が不十分で、『「ごかい」の中で石灰質の堅い管を形成して固着する種など』とすべきところである。ここで丘先生のおっしゃるのは非常に美しい鰓冠を持つ、

環形動物門多毛綱ケヤリムシ目カンザシゴカイ科イバラカンザシ Spirobranchus giganteus

などを指しておられるものと思われる。以下、ウィキの「イバラカンザシ」より引用する(アラビア数字は漢数字に代え、注記記号を省略した)。『体長は五~七センチメートル、体節数は二五〇ほどである。頭部に生えている二本の傘のようなものは口前葉から分化して鰓として発達した鰓冠(さいかん)であり、ケヤリムシ目に見られる特徴である。刺激を受けると鰓冠を素早く引っ込めることができる。また、鰓冠の目的は、これで浮遊生物を捕らえて口に運ぶことにもある。その鰓冠がかんざしのように見え、これがカンザシゴカイ科の特徴である。鰓冠は呼吸にも使われる。鰓冠は口の上背面の部分が左右に伸び、そこから前に鰓を発達させたものであるから、普通は上から見るとCの字形に並ぶ。しかしイバラカンザシではその両端がさらに伸びて内側に巻き込むため、左右対称の螺旋になった鰓の列が一対ある、という形になる』。『鰓冠の基部からは先端が広がった棒状の構造があり、これは虫体が棲管に引っ込んだときに入り口に蓋をするものなのでこれを殻蓋という。イバラカンザシは、この殻蓋の上の中央にある突起が枝分かれしてイバラのように見えることからその名が付いている。また、イバラカンザシ属の学名Spirobranchus の名は「螺旋状の鰓」を意味し、鰓冠が螺旋状になっていることから名付けられている。この鰓冠は色彩変異に富んでおり、赤、青、黄、緑などの個体がいる。二色以上の体色を持つものが七割であり、茶が最も多く三割の個体が有している。次いで黄、紫、橙、白、赤が多い』。『イバラカンザシは棲管(せいかん、定住場所となる管)を多くの場合にどこかに埋め込んで定住生活している。イシサンゴ目に埋め込んでいることが多い。棲管は石灰質でできており、これもカンザシゴカイ科共通の特徴である。棲管の色は灰白。棲管は定住場所に完全に埋め込まれているので、鰓冠をこの中に引っ込めると体全体を隠すことができる。ある研究によると、イバラカンザシの定住はイシサンゴに悪影響をほとんど与えない。死んだイシサンゴに定住することもあるが、普通は生きているイシサンゴを好む。そのため、大きなカンザシゴカイがいるということは、サンゴの健康の目安になる。ただし金属表面でも別の生物の死骸により表面に凹凸があれば定着できる。棲管の年間成長速度は平均〇・六ミリメートル。棲管の直径は推定年齢十二歳のもので七・四ミリメートルである』。『個体を採取して年齢が調べられたことがあり、それによると一〇~二〇年程度のものが多かった。沖縄では推定年齢四〇年の個体も見つかっている。繁殖期は夏』。因みに、この『ある研究』はイバラカンザシとサンゴは稀有の片利共生であると主張しているように読める。群体性で自然界では驚くべき種保存の生態時間を持つサンゴならば、まあ、これはそう言えるのかも知れないな。]

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