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2013/01/19

生物學講話 丘淺次郎 第六章 詐欺 四 忍びの術(1)

     四 忍びの術


Isagomusi

[いさごむし]

 動物の中には、敵の眼を眩すために他物を以て身體を蔽ふものがある。庭園の樹木などに澤山に付く簑蟲(みのむし)はその一例で、樹の皮や枯葉の破片を寄せ集めて小さな筒を造り、その中に身を潜めて居るから、容易に生體が見えぬ。簑蟲は皆小さな蛾類の幼蟲で、常に木の葉を食する害蟲であるが、蠶などと同じく幼時には口から絲を出すことが出來るから、これを用いてさまざまな物を繫ぎ合せて筒を造るのである。また蛾とは全く別の昆蟲類でその幼蟲が他物を集めて筒を造るものがある。これは「いさご蟲」と名づけるもので、幼蟲が水の中に住み、絲を以て細かい砂粒などを繫ぎ合せ、その中に身體を入れ、頭と足だけを出して水中を匍匐し食物を探して歩く。枯葉の軸や樹の皮の筋などを集めて、恰も陸上の簑蟲と同じやうな筒を造るものは、溝の中にも普通に居るが、石粒を集めるものであると、筒の形が幾分か人形らしくなることもある。岩國の錦帶橋の邊で土産に賣つて居る「人形石」と稱するものは、この類の幼蟲の住んだ筒である。これらの幼蟲は生長すると水上に出て皮を脱ぎ、「とんぼ」に似た蟲となつて空中を飛ぶが、幼時にはかくの如く他物を以て身を蔽ひ、敵の眼を眩して居る有樣は陸上の簑蟲と少しも異ならぬ。

[やぶちゃん注:「簑蟲」鱗翅(チョウ)目ミノガ科 Psychidae 一般には、その中でもオオミノガ Eumeta japonicaの幼虫を指す。以下、ウィキの「ミノムシ」によれば、バラ科・カキノキ科などの果樹や、サツキ等の葉を、特に七月から八月の梅雨後の夏期に食害する害虫で、幼虫は摂食後の枯れ葉や枯れ枝に粘性の糸を絡め、袋状の巣を作って枝からぶら下がることで有名。わらで作った雨具「蓑(みの)」に形が似ているために「ミノムシ」と呼ばれるようになった。オオミノガは蓑の内部で終令幼虫(八令)のまま越冬するため、枯れ枝の間で蓑が目立つ。四月から六月にかけて蛹化し、六月から八月にかけて羽化する。蛾の形になるのは雄に限られる(雌は幼体成熟)。この時、雄は口が退化しており、花の蜜などを吸うことは出来ない。雄蛾の体長は三〇~四〇ミリメートル、幼体成熟する雌は無翅・無脚で、形は小さい頭に小さい胸、体の大半以上を腹部が占める形(雄同様に口が退化している)のまま、蓑の内部の蛹の殻の中に留まる(生殖器以外に雌雄の差を明確に区別出来る性的二形である)。雄は雌のフェロモンに引かれて夕方頃に飛行して、蓑の中の雌と交尾する。この時、雄は小さな腹部を可能な限り伸ばして蛹の殻と雌の体との間に挿し入れ、蛹の殻の最も奥に位置する雌の交尾孔を自分の交尾器で挟んで挿入器を挿入して交尾を果たし、その後、雄は死ぬ。雌は自分が潜んでいた蓑の中の蛹の殻の中に一〇〇〇個以上の卵を産卵、卵塊の表面を腹部の先に生えている淡褐色の微細な毛で栓をするように覆う。雌は普通は卵が孵化するまで蛹の殻の中に留まっており、孵化する頃に簑の下の穴から出て、地上に落下して死ぬ。幼虫は二十日前後で孵化し、蓑の下の穴から外に出て、そこから糸を垂らし、多くは風に乗って飛散、葉や小枝などに着地した一齢幼虫は直ちに小さい簑を造り、摂餌行動を開始、六月から十月にかけて七回の脱皮を繰り返し、成長するにつれて簑を拡大改変、小枝や葉片を付け足して大きくし、終令幼虫となる。秋に簑の前端を細く縊って、小枝などに環状になるように絹糸を吐いてこれに結わえ付け、越冬に入る。越冬後は通常、摂餌せずにそのまま蛹化する。但し、近年はオオミノガに特異的に寄生する外来種の双翅(ハエ)目短角(ハエ)亜目ハエ下目ヒツジバエ上科ヤドリバエ科ヤドリバエ亜科オオミノガヤドリバエ Nealsomyia rufella の幼虫による寄生によって生息個体が激減しており、各自治体のレッドリストで絶滅危惧種に選定されるようになってきている。因みに、オオミノガヤドリバエはオオミノガの終令幼虫を見つけると、摂食中の葉に産卵、卵は葉と共にオオミノガに摂食されるが、口器で破壊されなかった卵はオオミノガの消化器に達して体内で孵化する。一個体に付き、平均十羽程度のオオミノガヤドリバエが羽化するという。なお、丘先生が言う同様な蓑を造るケースについては『同じように糸で体を包んで、移動する巣を作るガは他にもある。家屋内ではイガが小さいながらも同じような巣を作る』とあり、丘先生の謂いと同様に、『また、トビケラ類の幼虫は水生昆虫であるが、多くの種が同じような巣を作る』と付け加えられているのには少し吃驚した。以上、私は五十五歳になって初めて具体なミノムシのライフ・サイクルを正しく知った。「枕草子」の虫尽くしの段で解説するためにそれなりの知識はあったつもりではあったが、この子細は、正直、驚きであった。ウィキの筆者に感謝するとともに、何か、不思議に胸打たれるものがあったことを記しておきたい。

「いさご蟲」毛翅上目毛翅(トビケラ)目 Trichoptera に属するトビケラ類の幼虫を指す。属する種の殆どで翅が刺毛に覆われており、全世界で四十六科一二〇〇〇種以上が認められており、本邦にはその内、二十九科四〇〇種以上の生息が認められている。成虫は管状で長い糸状の触角を持ち、羽根を背中に伏せるようにして止まる姿は一部の蛾の類に似て見える。以下、参照したウィキの「トビケラ」より引用する(一部のコンマを読点に変更した)。『完全変態をする。幼虫はほとんどが水生で、細長いイモムシ状だが胸部の歩脚はよく発達する。頭胸部はやや硬いが、腹部は膨らんでいて柔らかい。また、腹部に気管鰓を持つものも多い。砂や植物片を自ら出す絹糸に絡めて円筒形その他の巣を作るものが多い。巣の中で蛹になる。羽化の際は、蛹自ら巣を切り開き、水面まで泳ぎ上がり、水面や水面上に突きだした石の上などで成虫になる。この様な羽化様式が多いが、クロツツトビケラなどでは、水中羽化も報告されている。『また、トビケラは種による差が認めにくいものがあるために同定は難しいものも多い。幼虫は巣の形で属レベルの同定が可能なものもある。成虫については、翅に明瞭な斑紋や色彩を持つ種もあるが、地味なものが大部分で、雌雄の生殖器の構造を見ることが必要になる』。『トビケラ類の幼虫はいさご虫(沙虫)と呼ばれ、水中生活で、多くが巣を作る事で有名である。巣は水中の小石や枯れ葉などを、幼虫の出す糸でかがって作られる』。巣の型には大きく分けて携帯型(移動可能なもの)のものと固定型の二種があるが、『もっとも一般的なのは、落葉や砂粒・礫などを綴り合わせて作られる鞘状や筒状の巣で、携帯巣(けいたいそう)、筒巣(とうそう)あるいはケーシング(casing)と呼ばれる。体がぴったり入る大きさで、前方から頭胸部を出して移動したり採餌したりするもので、言わば水中のミノムシ状態である。水中の植物質を餌とするものが多く、礫で巣を造るニンギョウトビケラなどが有名である』。『これに対して、シマトビケラやヒゲナガカワトビケラなど「造網性」と呼ばれる種類の作る巣は、渓流などの石に固定されており、その一部に糸による網が作られ、ここにひっかかった流下微粒子を食べる』。以下、シマトビケラ科やヒゲナガカワトビケラ科等では、『乱雑な巣を植物片や小礫で』、ヒゲナガトビケラ科では『砂粒や植物片などさまざまな材料を用い』、トビケラ科では『植物片をらせん状などに編』み、キタガミトビケラ科は『円錐形の巣の末端を石などに固定』した造巣をするとある。最後に「人間とのかかわり」の項には、まさに丘先生の指摘されておられる、『ちょっと特殊な利用例として、山口県岩国市の錦帯橋付近ではニンギョウトビケラの巣を土産物として販売している。この種は筒巣の両側にやや大きめの砂粒を付け、蛹化する際には前後端に砂粒をつけて蓋をする。この後端の石を頭に見立て七福神や大名行列を作る』とまで記されていて、何だか、丘先生の肉声が聞こえて来るようで、言いようもなく楽しくなってきたことを告白しておく。

「人形石」上記注に出るように、トビケラ目ニンギョウトビケラ科ニンギョウトビケラ Goera japonica の幼虫の棲管で、砂粒で作った巣の両翼には大きめの砂粒を三対附ける(成虫の体長は約一〇~一二ミリメートルで、触角は黄褐色で太く、体長とほぼ同長)。岩国石人形資料館が詳しい。天然の棲管の画像は同資料館のにある。]

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