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2013/03/27

文學者の悲哀 萩原朔太郎

       文學者の悲哀

 

 文學者は、人生の批判者であつて行動者ではない。彼等は、人生の競技場に於て、自ら競技してゐるところの選手ではなく、彼等の觀覧席に於て、それを描寫したり、批評したりしてるところの觀察者である。しかも彼等もまた、自ら生活して生きるために、競技する行動者と同じやうに、金儲けを考へたり、世渡りの苦勞をしたり、女のことで惱まされたり、妻子を抱へて世帶を作つたりして、煩瑣な俗事に追はれながら、日々の處世をせねばならない。觀察者であつて、同時に行動人の義務を負ふといふこと。それが文學者にとつての、何より悲しい宿命である。

 

[やぶちゃん注:昭和一五(一九四〇)年創元社刊のアフォリズム集「港にて」の冒頭パート「詩と文學 1 詩――詩人」の十一番目、先に示した「文學者と讀者」の直後に配されたものである。]

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