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2013/03/05

生物學講話 丘淺次郎 第八章 団体生活 二 社會~(1)

言っておくが、僕は、各種の情報を漫然と安易にコピー・ペーストして引用している訳ではない。本ブログの「苔蟲」の注をようく読んで戴ければ分かるであろう。


     二 社會

Sangonoguntai

[珊瑚の群體]

 

 水中に生活する動物には芽生によつて蕃殖するものが幾らもあるが、これらの動物は多くは親と子との身體が一生涯離れず相續いたままで居るから、段々大きな群體が出來る。例へば「珊瑚」の蟲なども、初め卵から生ずるときは一疋であるが、次第に芽生して終に樹枝狀の群體となり終る。その有樣を人間に比べて見たならば、恰も一人が椅子に腰をかけて居ると、その人の腰の邊から横に芽が生じ、それが少しづつ大きくなり、終に完全な成人となつて、隣の椅子に腰を掛け、またその人の腰の邊から横に芽が生えて、三人、四人と次第に人數が增加して行く如くである。かやうにして生じた群體では一個一個の身體は互に連續して居て、同じ血液が全部に循環し、同じ滋養物が全部に分配せられるから、生活上には全部が恰も一疋の動物の如くに働き、各個體が互に相爭ふことはない。假に甲乙一個體の中間の處へ餌になる物が流れ寄つたとしても、甲か乙か近い方が靜にこれを捕へ食ふだけで、引張り合つて爭ふ如きことは決してせぬ。但し甲が食つても乙が食つても、その消化した滋養分は隣から隣へと流れて順々に分配せられるから、互に相爭つて食ふ必要はない。このやうな動物では生存競爭に於ける單位は一疋づつ相離れた個體ではなく、多數の個體である。隨つて生存のために相戰ふに當つては必ず群體と群體とが對抗し、各個體は、たゞ自分の屬する群體の戰鬪力を增すために同僚と力を協せて必死に働くだけで、隣の者と相爭ふ如きことは絶對にない。海産の固著動物にはかやうな例が澤山にあるが、淡水池や沼に住む苔蟲類なども、生活の狀態は全くこの通りで、實に理想的の團體生活を營んで居るといふことが出來る。

Kokemusi

[淡水苔蟲]

[やぶちゃん注:本図は底本の刷りが非常に薄いため、国立国会図書館蔵の大正一五(一九二六)年版の図を同ホームページより挿絵のみトリミングして転載した。【2014年1月4日上図正式追補・国立国会図書館使用許諾済(許諾通知番号国図電1301044-1-5703号)】]

 

[やぶちゃん注:「苔蟲類」広義には外肛(がいこう)動物門 Bryozoa または Ectoprocta に属する。珊瑚に似た炭酸カルシウムなどからなる外壁を造って小群体を形成し生活する動物を指すが、一般にはコケムシの名の方が通りがよい。殆んどは温帯から熱帯の海を好むが世界中に分布し、現在、約六〇〇〇種が確認されている。ここで丘先生は、その中でも例外的な淡水産コケムシを例に挙げているが、淡水に生息する種は約七〇種ほどと少ない。恐らく丘先生は読者が接し、観察し易い種として淡水産を示されたものと思われるが、岩礁海岸などでも海産コケムシは容易に発見は出来る(私が八年前に総合学習で海岸動物観察に生徒を引率し、右腕をぐしゃぐしゃに折った直前にもその群体を見つけて生徒にこれが群体生物であることを教授したことが今も忘れられない)。参照したウィキの「外肛動物より引用する(アラビア数字を漢数字に代え、記号の一部を変更・省略した)。この『群体は、山型、扇型、小枝型、栓抜き型など様々な形をとる。外壁には小さな穴が無数に開いていて、それぞれが個虫(zooid)と呼ばれる個々の個体である。これらは口から肛門まで続く消化管からなる真体腔の構造も持っている。口の周りの触手には繊毛が生えている総担(ふさかつぎ)と呼ばれる構造があり、珪藻や藻類を含む微生物を捕まえて餌とする。これは繊毛の生えた触手が口を囲んで配置したもので、全体をまとめて触手冠をなす。触手冠は、完全に動物体の内部に引き込むことができる』。『触手冠はこの動物のよく目立つ特徴であるが、その形には大きく二つの形がある。一つは円形に配置するもので、もう一つはそれが大きく曲がってU字型(馬蹄型)になったものである。前者は主に海産である裸喉綱と狭喉綱にみられ、後者はすべて淡水産の掩喉綱にのみみられる。ただし、掩喉綱の Fredericella 科は例外的に円形の触手冠を有している。裸喉綱や狭喉綱にみられる円形の触手冠では、その内側は例えばイソギンチャクの口盤のような広い面を持っておらず、触手の寄り集まったところに口が開く。掩喉綱のU字型の触手冠では、U字の底にあたる部分に口が開き、その両側の触手の列が大きく同一方向に伸びたような形になっている。肛門は触手冠のすぐ外に開く。掩口綱ではU字の底、口のある位置近くに開く。触手は繊毛に覆われていて、繊毛を使うことによって水流を作り、餌を口まで運ぶ』。その内部構造は、当該動物が『小さすぎるため、きちんとした呼吸器系や循環器系を持たないが、神経系や骨格系は持っている。骨格の結晶学的解析によると、方解石やアラレ石に似た構造が見られ』、『消化管はU字型に湾曲しており、咽頭から食道を通り、噴門、盲嚢、幽門とつの部分に分かれた胃へと続く。幽門から小腸を経て直腸、肛門につながっている。ある種では、噴門の前に砂嚢がある。消化管系は、個虫がそれぞれ持つ器官であるが、群体を作る時に再構成される。多くの外肛動物では一部の若い個虫しか消化機能を持たない。大きさが小さいために、外肛動物には循環系がない。ガス交換は体表全体で行うが、特に触手の部分で盛んである』とある。『裸喉綱では、群体を構成する個虫に多形がみられる例が多い。触手を持ち、えさをとる普通の個虫を常個虫という。これに対して、特殊な形になったものを異形個虫と呼んでいる。以下のようなものが知られる。

空個虫:個虫本体は退化し、個虫の部屋のみが残ったもの。群体の支持を担う。

鳥頭体:個室の入り口がくちばし状になって突出したもの。外敵の防衛や群体の清掃。

振鞭体:長い鞭状の突起が生じたもの。同じく外敵の防衛や群体の清掃。

卵室:卵を保持。

群体内の個虫はすべて無性生殖によって増えたもののため、遺伝的に同一である。そのため、自ら繁殖しない個虫も、他の個虫の繁殖を助けることによって、次世代に遺伝子を残すことができると考えられる。すなわち、個虫の機能分化は、社会性昆虫のカースト分化などと同様に、血縁淘汰によって説明することができる』。その生殖と発生は、『一部の例外を除いて外肛動物の個虫は雌雄同体である。外肛動物は無性生殖も有性生殖も行う。有性生殖ではキフォナウテス幼生などの幼生を生じる。無性生殖では新しい個虫を出芽によって形成することにより、群体が大きく成長する。群体の一部が壊れることにより、それぞれの破片が成長して新しい群体となる場合もある。このようにしてできた群体は、群体内の個虫同様にクローンで』、『掩喉綱では、無性生殖により休芽が形成される。これは二枚のキチン質の殻に包まれたもので、耐久性があり、冬をこれで乗り切るほか、水鳥の足などにくっついて分布を拡大するにも役立っているとされる』。『なお、幼生が変態したり休芽が発芽して生じた最初の個虫のことは、初虫(ancestrula)と呼ばれる』とある。生態は先に述べた通り、『ほとんどの外肛動物は海に生息するが、淡水中に生息する種類も七〇種ほど知られている。水中では、砂地、岩地、貝殻や木、海草の上などどのような場所にも存在する。しかしある種は固い基質の上では育てず、堆積物上で生活する。また、八二〇〇メートルもの深海で生息する種もいるが、多くは浅い場所で生活する。多くの外肛動物は固着性で自分では動けないが、一部の種は砂地を這うことができ、単独で動き回りながら生活する種もある。また南極海を漂いながら生きる種もいる』。『外肛動物の群体は数百万匹もの個体が集まってできることもある。個体の大きさはミリメートル以下だが、群体の大きさは数ミリメートルから時には数メートルにも達する。一部では、群体を構成する各個虫に機能分化がみられる。餌を集める通常の個体に対して、群体を支持・強化する個虫や、掃除をする個虫もいる。一方、外肛動物自体はウニや魚の餌となっている。淡水産の掩喉綱には特殊な寄生虫として軟胞子虫の Buddenbrockia が知られている』。フサコケムシ Bugula neritina やホンダワラコケムシ Zoobotryon verticillatum 『など、多くの種類が人工的な基盤上によく繁殖する。生簀に繁殖すると網目を詰まらせ、あるいは船底に付着して船足を止めるので嫌われる』とあり、先般、利尻島に私が旅した際、コンブ類に虫が附着して外見が悪くなって商品価値が落ちると漁民が町役場の役人と一緒に歎いている現場に行き遇ったことがある(この時、私がそれを見て「これはコケムシですね。かなりひどいやられようだ。」と言ったら、彼らが「あんたは学者か?」と驚かれたのが忘れられない)。『淡水産のオオマリコケムシ』 Pectinatella magnifica 『は巨大なゼラチン質の群体となって水中に浮遊し、人を驚かせることがあり、また水質悪化を招く場合もあ』り(ウィキオオマリコケムシで巨大な群体を見られる)、『一部の種は毒性を持ち、漁夫の皮膚病の原因となる。フサコケムシ Bugula neritinaは、抗がん剤になりうる細胞毒性を持つブリオスタチンという化合物を生成するとして、注目を集めている』。歴史的には、『この類は古くはサンゴなどとともに植虫(Zoophyta)などと呼ばれたが、その内部構造などが明らかになると、間違いなく動物であり、しかもサンゴなどよりはるかに複雑な構造であることが判明したことから独立に扱われるようになり』、一八三一年、Ehrenbergによって『コケムシ類(bryozoa)とされた。当初はスズコケムシ類もこれに含めたが、両者の違いがはっきり理解されるに従い、それぞれ独立した群と見なされるようになった。外肛動物の名は、スズコケムシ類との関連で、コケムシ類の場合は肛門が触手冠の外にあるのに対して、スズコケムシ類ではその内側にあるため、この類を内肛動物と呼んだのに対比させたものである』とある。]

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