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2013/03/24

沢庵宗彭「鎌倉巡禮記」 6

 一たびかしこに往て一香をたき、報恩の志をとげ、其外諸祖の塔を燒香順禮せばやとて、寛永十年癸の酉の仲冬の初に江府を出れば、旅より旅にたつ衣手さむきあかつき、左は江水漠々として白く、右にむかへば富士の根しろし。しのゝめも明ゆくそらに村寺の鐘を聞て、

 曉出江城對士峰 路邊水白照衰容

 征人馬上知繼夢 道者緩敲村寺鐘

[やぶちゃん注:書き下す。

 

 曉に江城を出でて士峰に對す

 路邊水白うして衰容を照らす

 征人 馬上 知 夢を繼ぎ

 道者 緩(かる)く敲く 村寺の鐘

 

底本では「出て」、「繼く」、「緩敲く」である。]

  旅人の朝立てゆく馬の上に みつゝや宿に殘しつる夢

  またさめぬ此世の夢に夢をみて いやはかなゝる身のゆく衞かな

  旅衣かたしく袖に入る夢は 古郷人のよるのこゝろか

  旅衣かりねの夢は夢の世を 見ならはしともしらてはかなき

[やぶちゃん注:「寛永十年癸の酉」寛永十(一六三三)年癸酉(みずのととり)。]

 

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