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2013/04/08

およぐひと 萩原朔太郎 (「月に吠える」版)

 およぐひと

およぐひとのからだはななめにのびる、

二本の手はながくそろへてひきのばされる、

およぐひとの心臟(こころ)はくらげのやうにすきとほる、

およぐひとの瞳(め)はつりがねのひびきをききつつ、

およぐひとのたましひは水(みづ)のうへの月(つき)をみる。

[やぶちゃん注:「月に吠える」初版(大正六(一九一七)年二月感情詩社・白日社出版部共刊)の「くさつた蛤 なやましき春夜の感覺とその疾患」の五篇目。朗唱なさってみらるるがよい。これは完全に朗詠のために改稿されたものであうことが分かる。そうして――そうして詩とは論理性と無縁であることがはっきりと分かる。それは一つの完成された神話なのだ。「およぐひと」という神話全体が発動すれば、そこでは「胴體」も「心臟(こころ)」も「こころ」も「瞳(め)」相互に置換されても全く問題がない。優れた詩とは確かに伝説なのである。]

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