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2013/04/12

銀の足鐶 大手拓次

 銀の足鐶

 ――死人の家をよみて――

 

囚徒らの足にはまばゆい銀のくさりがついてゐる。

そのくさりの鐶(くわん)は しづかにけむる如く

呼吸をよび 嘆息をうながし、

力をはらむ鳥の翅(つばさ)のやうにささやきを起して、

これら 憂愁にとざされた囚徒らのうへに光をなげる。

くらく いんうつに見える囚徒らの日常のくさむらをうごかすものは、

その、感觸のなつかしく 強靱なる銀の足鐶(あしわ)である。

死滅のほそい途(みち)に心を向ける これらバラツクのなかの人人は

おそろしい空想家である。

彼等は精彩ある巣をつくり、雛(ひな)をつくり、

海をわたつてとびゆく候鳥である。

 

[やぶちゃん注:「死人の家」は、恐らくドストエフスキイの「死の家の記録」(原題“Записки из Мёртвого дома”一八六二年作)である。かれが読んだのは片上伸(かたやまのぶる)訳の大正三(一九一四)年博文館刊の「近代西洋文芸叢書」第六冊に所収されたものであろう。この時の邦訳題は「死人の家」である。]

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