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2013/07/09

日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第五章 大学の教授職と江ノ島の実験所 18 将棋の王将の駒の絵

M138
図―138

 昨晩私は将棋盤を使ってやる遊技を、三種類習った。学生の一人が私に日本の将棋を教えようと努めたが、私には込み入り過ぎていて了している。将棋駒は黄楊(つげ)材製で着色してない、つまり自然の色のままである。

M139
図―139

[やぶちゃん注:この「王将」の字の写しが面白いので、回転正立させた画像も示しておきたい。


M139kai

「王」さらに「將」の字が特にデザインのように見えたのに違いない。]

 駒には大小があるが、形はみな同じである。王の一族が一番大きく、兵隊即ち卒が一番小さい。駒は迫持(せりもち)の楔石(くさびいし)に似た形をしていて細い方が薄く、黒漆でその名が書いてある(図139)。数は二十、宮廷関係の駒が第一列を占め、卒は第三列、それから二つの駒がその間、即ち第二列に置かれる。王は四角の第一列の中央に、その左右に黄金の将軍、次に銀の将軍がいる。黄金の将軍は斜に前進するほか、前方、及び左右にはまっ直に進むが、後方には直線に退く丈である。銀の将軍は我国の将棋でいうと僧正の役をつとめるが、同時にまっ直に前進することも出来る。飛竜の将軍は我々のルックのように動き、一枚の斜進する将軍は僧正同様に動く。盤の右隅にいる一つの駒は前進することしか出来ぬが、敵の第三列に入ると黄金の将軍に変身する。馬兵と呼ばれる二つの駒は我々のナイトと全く同様に動くが、只後進することは出来ない。これ等も敵の第三列に入れば、希望によっては、黄金の将軍になることが出来る。勝負の時には駒の細い方の端が敵に面するので、敵味方を区別するのはこれによる丈である。二人の者が植物性の蠟燭のうす暗い光の下で、盤上にそれと同じ様に黒ずんだ駒をのせて勝負している有様は、まことに物珍しい。駒を捕虜にする仕方は、我々と同様だが、只卒は一直線に進んで敵を捕える。この遊技で最も奇妙であり、またこれあるが故に我我の将棋が簡単なものと思わせる点は、捕虜にした敵の駒をいつでも、いかなる場所にでも、使い得ることで、従って形勢不利な場所には、このような囚人が後から後から出て来て敵に当り、攻撃される方でも同様にして敵の囚人を利用することがある。これは最もこみ込った遊技で、理解するには余程の知力を必要とする。脚をむき出しにした人力車夫達が、客を待ちながらこの遊技をしている有様は奇抜なものである。
[やぶちゃん注:底本では「ルック」(ルーク)の後に『〔飛車〕』、「ナイト」の後に『〔騎士〕』の訳者割注が入る。]

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