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2013/09/18

Mes Virtuoses (My Virtuosi) ズィムバリストを聴きしこと 三首 中島敦

    ズィムバリストを聽きしこと

 

帝劇の三階にしてこの人のアヴェ・マリア聞きぬ十年(ととせ)前のこと

 

其の夜われ切符は買ひしが金(かな)なくて夕食(ゆふげ)たうべずひもじかりしよ

 

アンダンテ・カンタビレの音(ね)しみじみとすき腹にこたへ今も忘れず

 

[やぶちゃん注:「ズィムバリスト」はロシア人ヴァイオリニスト、エフレム・ジンバリスト(Efrem Zimbalist ロシア語名エフレム・アレクサンドロヴィチ・アロノヴィチ・ツィンバリスト Ефре́м Алекса́ндрович Аро́нович Цимбали́ст 一八八九年~一九八五年)。指揮者や作編曲も手掛けた。ロシアのロストフ・ナ・ドヌにてユダヤ系音楽家の家庭に生まれ、指揮者であった父親の楽団で八歳になるまでにヴァイオリンを弾き始めた。十二歳でペテルブルク音楽院に入学、卒業後はベルリンでブラームスの協奏曲を弾いてデビュー、一九〇七年にはロンドンで、一九一一年にはボストン交響楽団と共演してアメリカ合衆国でもデビューし、その後はアメリカに定住した。大正一一(一九二二)年初来日して以降、四度に亙って来日している。参照したウィキエフレム・ジンバリストには、『古い時代の音楽の演奏によって、大いに人気を博した』とある。

 他のサイトの情報で彼の二度目以降の来日は大正一三(一九二四)年・昭和五(一九三〇)年秋・昭和七(一九三二)・昭和一〇(一九三五)年であることが分かった。一首目で「十年前のこと」とあり、本歌群の完成が昭和一二(一九三七)年であること(有意に八年前の昭和五年の方が自然である)、大正一三年(敦満十五歳)には朝鮮の京城にいたことから、昭和五年の来日公演の嘱目吟と推定する。貧窮の中で公演を聴きに行っている状況は、まさに敦のシュトルム・ウント・ドランクとも言うべきこの、東京帝国大学一年生満二十一歳であった昭和五年の秋の可能性がすこぶる高いように思うからである(昭和七年満二十四歳では六年前で「十年前」とドンブリで言うには無理があることと、この時期の敦が三月にたかと結婚、秋に朝日新聞社の入社試験を受験するも身体検査で不合格になったりと責任ある家庭人社会人の面影が強く、本歌の飢えた青年のイメージとはそぐわないと感じるからでもある)。

 なお、この昭和五年秋の来日の際、満十歳の一人の少女がジンバリストに面会し、メンデルスゾーンの協奏曲を演奏してジンバリストを驚嘆させ、メディアは挙ってこの天才ヴァイオリン少女を喧伝したが、この少女こそ昨年亡くなられたヴァーチュオーソ諏訪根自子さんである。

 三首目に詠まれたチャイコフスキーの弦楽四重奏曲第一番ニ長調作品十一の第二楽章「アンダンテ・カンタービレ」(Andante cantabile)はジンバリストの得意としたものらしく、SP音源で本邦で録音されたものが残っている。この冒頭の旋律は私の物心ついた頃からの子守唄であった懐かしい曲である。

 最後に〆の注。往年の人気テレビドラマ「サンセット77」の主役の探偵スチュアート・ベイリー役や、同じく私もよく見たドラマ「FBI」の主役ルイス・アースキン捜査官役のエフレム・ジンバリスト・ジュニアという甘いマスクの男優は彼の息子である。]

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