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2013/10/03

中島敦短歌拾遺(4) 昭和12(1937)年手帳歌稿草稿群より(13) 奇体にして妖しき四句体歌

別るゝと かねて知りせば

なかなかに 遇はざらましを【二行ともに全抹消】

 

[やぶちゃん注:突然、ここから最後まで分かち書きとなる。本歌は総て抹消されている。「なかなか」の後半は底本では踊り字「〱」。この抹消歌は以下続く歌を見れば一目瞭然であるが、これは――短歌の未完抹消――ではないこれらは五七五七形式の四句体歌である。しかも以下、少なくとも分かち書きの六首目までは、先行する妖しい秘かなる恋歌十一首の改稿再詠(必ずしも順番に書いている保証はないものの)と考えてよいと思われる。]

 

駿河野の 八月の朝は

女郎花 房重げなり

 

[やぶちゃん注:別案として、

 

駿河野の 八月の朝は

女郎花 房繁かりし

 

が復元出来る。]

 

花かざし ふりさけ見れば

富士ケ嶺も 間近かりけり

 

街道に 未だ人なく

蘭の香の、はつかに洩れつ

 

[やぶちゃん注:別案として、

 

街道は 未だ人なく

蘭の香の、はつかに洩れつ

 

が復元出来る。]

 

手を曳きて、繭の市場の

裏どほり 歸りきしかな

 

[やぶちゃん注:別案として、

 

手を曳きて、繭の市場の

裏道を 歸りきしかな

 

が復元出来る。本歌は本手帳で先行する、

 

昏のまゆの市場の裏路のまゆの匂もなつかしきかな

 

の別稿である。]

 

かねて知る 別れなれども

すべなしや なみだ流るゝ【二行ともに全抹消】

 

[やぶちゃん注:あたかも不思議な四句体歌を四首中に挟んで、呪符の如く抹消歌が額縁の如あるかに私には見える。]

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