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2014/01/13

生物學講話 丘淺次郎 第九章 生殖の方法 五 分裂 ヒトデの場合

Hitodenobunretuseisyoku

[「ひとで」の分裂生殖]


 「ひとで」の類にも常に分裂によつて蕃殖ものがある。普通の「ひとで」でも腕が一本切れたときには、直にその代りが生ずるが、熱帶地方に産する種類には、自身で體を二分し各片が成長して終に二疋の完全な個體となるものがある。「ひとで」の體は中央の胴と、それから出て居る五本の腕とから成るが、普通の「ひとで」では腕が一本切れると、胴の方から再び腕を生じて體が完全になる。しかし切れた腕の方はそのまゝ死んでしまふ。しかるにある種類のものでは胴から新に腕が生ずる外に、切れた腕の方からは新に胴と四本の腕とが生じて都合二疋となる。人間に比べていへば、右の腕を一本切り取ると胴の方からは右の腕が新に生じ、その切り取つ右の腕は傷口から肉を增してまづ胴が出來、次に頭と左の腕と兩足とが延び出て、終に二人の完全な人間になることに當る。これは分裂ではあるが、體の一小部分が基礎となつて殘餘の部分が悉く新に生ずるのであるから、餘程芽生にも似て居る。畢竟分裂といひ芽生といふのも一個體が二片に分れる時の兩半の大きさによることで、もしも兩半の大きさがほゞ相均しければこれを分裂と名づけ、兩半の大きさが著しく違つて大きい方は舊の個體そのまゝに見えるときには、これを芽生と名づけるに過ぎぬ。前に例に擧げた「ごかい」類の分裂生殖でも、今こゝに述べた「ひとで」の分裂生殖でも、見やうによつては芽生の一種と名づけられぬこともなからう。

[やぶちゃん注:ヒトデの生態に関わる記載で最も私が学術的に面白いと思ったものは、北海道地方独立行政法人北海道立総合研究機構水産研究本部の公式サイト「マリンネット」の「試験研究は今」三九四号の釧路水産試験場主任専技渡辺雄二氏の「ヒトデについて」である。短い報告ながら、そこではヒトデの再生(次章参照)や自切による生殖に関する大切なポイントが殆んど網羅されていると思われるからである。以下、当該部分を引用すると、『ヒトデは腕のどの部分を切っても再生は行われます。再生の速さは腕の基部で切った方が再生が速いですが、元の形に戻るまでにかなり時間がかかります。あるものでは完全に再生されるまで1年以上もかかります』。『再生には一般的に盤(盤は体の部分で腕と盤から1個体のヒトデになっています。概略図参照)の一部が付いていることが必要で、再生に必要な量は、種によってかなり異なって、盤の量は少なくとも20~75%が腕に付いているときは完全に再生されると言われています。それでも種類によっては1腕から再生した報告もあります』とあり、『普通では見られないと思いますが、腕を上下に切った時には、その腹側の半分からは再生されますが、背側の方からは再生はされません』という再生するための重要な条件が示されてある。『そのほかに、今回の試験では、自切が、観察されました。それは、ヒトデを切断して、再生と生残の確認のため飼育を行っている時に、ヒトデ自らが更に切断して細分化してしまうものでした。この時は、ヒトデの主部分も、他の小さな部分も生きていました』とあって、彼等が不可抗力による切断での再生以外に、丘先生がこの分裂の章で書かれているような自律的な自説による「分裂」を行うケースが種によっては起こる事実が記されてある。さらに『また、無性生殖を行う種類(主に多腕種、6腕以上の種類で、穿孔板を複数以上持っている)では、自切により、増殖することが知られています。増える時には、およそ腕や穿孔板は半分に分かれていき、盤の分裂する位置は切れやすい構造となっています。このように分裂して増えるのは幼個体に見られるものです』という。リンク先の模式図とともに必見である。なお、本来なら次章の注に相応しいが、切断された腕からの再生の様態が如実に分かる画像がブログ「真鶴 栄寿司My検索図鑑 海の生き物たち♪」の「ヒトデの再生」にある。これも必見である。

 ただ、これらは「再生」現象を主体とした記載で、今一つ、本章の「分裂」による生殖行動としての補説としては弱い気がする。そこで何かここに注するに相応しいものはないかと蔵書の山をひっくり返した結果、TBSブリタニカ二〇〇二年刊の佐波征機氏と入村精一氏の共著になる「ヒトデガイドブック」の中のコラム「わが身を裂いて増えるヒトデ――無性生殖」の記事を見つけたので、これを紹介しておきたい。著作権上の問題はあるが、このコラム全体を示すと、まさに丘先生がここで述べておられる内容の最新の知見が補われると判断し、以下に例外的に引用したい(文中の同図鑑の各種参考注記は省略した。問題があるならばヒトデのように分節して示しようはあるが、それでは如何にもまさにヒトデナシになろうかと私は考えるものである。なお、「すいせい」は底本ではルビ)。

   《引用開始》

 ヤツデヒトデは盤を2分裂して2個体になる。体の半分ずつが管足を底質に吸着して互いに反対方向に引っ張り、盤の中央から2つに引き裂かれる。口になる部分を残して傷口は再生じた皮膚で閉じられ、やがて失われた体の半分が再生する。分裂は種によってはかなり普通に行われており、小笠原簿島や魔球諸島産のカワリイトマキヒトデやコサメハダヒトデは個体群のほとんどすべてが再生中の短い腕を持ち、正常な形の個体はまれである。一般に分裂をするヒトデは小型種で、肛門や穿孔板が2個以上あり、半数の腕が再生中で短いものが多い。

ゴマフヒトデやルソンヒトデは自切した1本の腕から4~5本の腕と盤を再生して新しい個体をつくる。再生中の4~5本の短い腕を持つ個体は形が彗星(すいせい)(ほうきぼし)に似ているので“コメット”と呼ばれる。自切で生殖するヒトデはほとんどがサンゴ礁にすむ小型種で、ときには有性生殖もするが主に無性生殖で個体群を維持している。同種の個体数が少なく、或熟した雌雄が出会う機会が少ないサンゴ礁の生活に適応した繁殖戦略の1つと考えられている。

 幼生や稚ヒトデも無性生殖をする。メキシコ湾産のスナヒトデの一種は、ビピンナリア幼生が腕の一部を自切して新しいビピンナリア幼生をつくる。幼生が生活史の中で何回自切を繰り返すかはわかっていないが、幼生の自切による生殖は浮遊期問を延長してより広い範囲に分散できる利点があると考えられている。ニッポンヒトデのブラキオラリア幼生でも自切、出芽が報告されている。

   《引用終了》

以下、引用文中に現われるヒトデについて主に同書をもとに学名を示しておく。

「ヤツデヒトデ」は本邦沿岸に於いて普通に見られるヒトデで、腕が八本前後あるヒトデ綱マヒトデ目マヒトデ科ヤツデヒトデ Coscinasterias acutispina

「カワリイトマキヒトデ」は本邦産の最小のヒトデの一種であるアカヒトデ目イトマキヒトデ科カワリイトマキヒトデ Asterina anomala

「コサメハダヒトデ」は体表に小棘が密生してざらついた感触を持つアカヒトデ目イトマキヒトデ科コサメハダヒトデNepanthia belcheri

「ゴマフヒトデ」はピンク色の地に赤や黒の小斑紋を多数持つアカヒトデ目ホウキボシ科ゴマフヒトデ Linckia multifora

「ルソンヒトデ」はカラー・ヴァリエーションの多いルソンヒトデ目ルソンヒトデ科ルソンヒトデ Echinaster luzonicus

「スナヒトデ」は浅海の砂底に棲むモミジガイ目スナヒトデ科 Luidiidae の総称

「ニッポンヒトデ」は輻長(盤の中心から腕の先までの長さ)が二十五センチメートルにもなる大型種で養殖貝類の典型的食害種であるマヒトデ目マヒトデ科ニッポンヒトデDistolasterias Nippon

 

なお、「ピピンナリア幼生」(bipinnaria larva)及び「ブラキオラリア幼生」(brachiolaria larva)とは、一般的なヒトデ発生過程での幼生の名称。ヒトデの多くは体外受精で、孵化した幼生はプランクトン生活をする。幼生は左右相称で、体表面の繊毛帯を盛んに動かして自由生活する。生育するに従って繊毛帯は次第に体表面で複雑な曲がりくねった形を形成し始め、その一部が三対の突起となって突き出した状態をビピンナリア幼生、さらにそれが長い突起物として伸び出したものをブラキオラリア幼生を経て稚ヒトデとなる(但し、種によってはビピンナリア幼生或いはブラキオラリア幼生を欠いたり、稚ヒトデをそのまま産む卵胎生のものなどもいる)。]

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