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2014/01/10

生物學講話 丘淺次郎 第九章 生殖の方法 五 分裂 イソギンチャクの分裂/ノウサンゴ

Isogintyakubunnretu
[「いそぎんちやく」の分裂]


Nousanngo

[腦珊瑚]

 

 「いそぎんちやく」も分裂によつて蕃殖する。多くの種類では體は碾臼か茶筒の如き圓筒形であるから、上から見れば圓いのが常であるが、分裂せんとする時には、まづ楕円形になり、次に瓢簞の如き形になる。それより兩半は次第に相遠ざかり、瓢簞の縊れはだんだん細くなつて、終に體の下部から分れ始め、最後には僅に一本の細い絲で兩半が連絡して居るだけになり、更に後にはこの細い絲も切れて全く二疋に分かれてしまふ。これだけのことは「いそぎんちやく」を長く海水中に飼うておくと容易に見られる。珊瑚の類にも全くこれと同樣な分裂を行ふものが頗る多い。「菊目石」と名づけるものはその一例である。「いそぎんちやく」は各個體が相離れて獨立に生活して居るから、分裂は完全に行なわれ、始め一疋のものが後には必ず二疋になり終わるが、珊瑚類の如き群體を造る動物では分裂が往々不完全に行なわれ、一疋が二疋に分れ終るまでに至らず、途中で止まつて兩半が更に各々分裂を始めることがある。即ち瓢簞の縊れが細くならぬ間に兩半が更に瓢簞の形となり、その新しい縊れが細くならぬうちに四半分づつのものが更に各々瓢簞の形になり掛る。かやうに分裂し始めるだけで分裂し終らぬ生殖法が引き續いて行はれると、無論多數の身體の相繫がつた一群體が生ずるが、個體の間の縊れが不明瞭でどこにあるかわからぬやうな場合には、その群體の中に何疋の個體があるか算へることが出來ぬ。「腦珊瑚」と稱する珊瑚の一種はその一例で、群體であることは誰にも明に知れるが、個體の境がないから、一疋二疋と勘定することは出來ぬ。言葉を換へれば、この動物の身體は群體として存在するだけで個體には分れて居ない。一體、「腦珊瑚」といふ名は、その塊狀の骨骼の表面に個體の區劃が少しも見えず、恰も人間の腦髓の表面に見る如き彎曲した凸凹がある所から附けたのであるが、この珊瑚の海中に生きて居る所を見ると、石灰質の骨骼の外面には極めて柔い身體の薄い層があり、その表面には食物を食ふための若干の口と、食物を捕へるための多數の觸手とが、波形をなして竝んで居る。これを人間に比べていへば、百人分の身體をかためて一塊とし、これを百疊敷の座敷に薄く延ばして擴げ、百箇處に口を附け、二百本の腕を口の間に竝べ植ゑ附けた如くであらう。食物が流れ寄れば、最も近くにある腕でこれを捕へ、最も近くにある口の中に入れる。個體の境界などはあつてもなくても、食つて産んで死ぬるにはなんの差し支へもない。世人は常に個體に分れた動物のみを見慣れて居るために、個體に分れぬ動物のことには考へ及ぼさぬが、生物はすべて種族として食つて産んで死ぬのに都合のよい形を採るもので、個體に分れて居る方が食つて産んで死ぬに都合のよい種類では、個體が判然と分かれ、その必要のない種類では必ずしも個體に分れるには及ばぬ。人間は自分らが個體に分れているから、何事でも個體の區別を基として定めてあるが、これは餘り當然のことで却つて誰も氣が附かずに居る。しかし生物界にはこゝに述べたやうな個體の差別のない社會もあるから、哲學者などが物の理窟を考へるときに、戲れにでもこれをも參考して見ると面白からう。權利とか義務とかいふ個體間の喧しい關係はいふに及ばず、毎日用ゐる「君」とか「僕」とかいふ言葉までが、かやうな社會へ持つてゆけば全く意味を失つてしまふ。しかもいづれでも食つて産んで死ぬことは出來る。

[やぶちゃん注:『「いそぎんちやく」も分裂によつて蕃殖する』やや問題のある表現で、イソギンチャクの生殖が無性生殖で専ら分裂によるわけでは実はない。しかし、恐らく知らない人がここを読むと一見、単純な腔腸動物にしか見えないイソギンチャクは分裂でのみ増えるんだと思い込む。事実、小学二年生の私は学習漫画図鑑でイソギンチャクの分裂の絵を見てしまって以来、小学校高学年になるまでずっとそう思い込んでいたのだから間違いない。ところが寧ろ、イソギンチャク総体において概説する場合は、ウィキの「イソギンチャク」の「特徴」の記載のように、他の定在性の刺胞動物門の動物群の殆んどが『無性生殖によって数を増やし、多数が集まった群体を形成する場合が多い』のに対して、例外的に『イソギンチャク類は、すべてが単独生活であり、群体を作らない』。『無性生殖によって増殖するものもしばしば見られる』ものの、群体を作らず、分離した新生個体は足盤を活発に動かして寧ろ一定の距離を保ち、各個虫が明確なテリトリーさえ持つものもある。従って刺胞動物内では相対的に単体個虫は群体性刺胞動物よりも『大きなものが多』く、巨大種では口盤径が六〇センチメートル達するものもある。一般にはイソギンチャクは『雌雄異体であり、体外受精する』と説明する方が普通である。以下、有性生殖では『受精卵は孵化すると楕円形で繊毛を持ったプラヌラ幼生となり、これが定着して成長し、成体となる。中にはプラヌラ幼生を親の体内で育てるものもある。無性生殖を行うものも多く、分裂や出芽をするものが知られている』と無性生殖の分裂と出芽は稀とは言えないものの、最後に持ってくるのである(因みに花虫鋼六放サンゴ亜綱内腔(イソギンチャク)目イマイソギンチャク亜目足盤族内筋亜族ウメボシイソギンチャク科のコモチイソギンチャク Cnidopus japonicusのように有性生殖による受精卵を体腔内で育て、さらに生まれた幼体を体壁の外側に多数付着させるような種もあり、これらはかつて出芽と誤認されていたことも付け加えておかなくてはならない)。さて本題の分裂によって増えるものは、内筋亜族ハタゴイソギンチャク科サンゴイソギンチャク Entacmaea quadricolor と同ハタゴイソギンチャク科センジュイソギンチャク Heteractis magnifica がつとに知られ、丘先生のおっしゃるように飼育水槽の中でも容易に分裂する。イソギンチャクの分裂を撮った動画を幾つか見て見たが、nakamuy 氏の「イソギンチャクが分裂する連続写真」は別して美事で、丘先生の「最後には僅に一本の細い絲で兩半が連絡して居る」状態から分離するまでがしっかりと捉えられている。必見。

「菊目石」花虫綱六放サンゴ亜綱イシサンゴ目キクメイシ科Faviidae に属する珊瑚の総称若しくはキクメシイ属 Favia の仲間。個虫を側方に出芽しながら増やし、大きなものでは直径二~三メートルに達する塊状や球状の群体性のイシサンゴの仲間である。相模湾以南に分布し、黒潮沿岸の水深二~二〇メートルmに普通に産する。莢(きょう)は直径一〇ミリメートル前後で円形を成す(部分によっては多角形)。これを外から見た時、菊の花の模様に見えることから菊目石の名がついた。莢と莢との間には明瞭な溝があって近似種とは容易に区別出来る。莢内には薄い隔膜が多くあって、その中で十六から十八個が中央まで達しており、上縁には鋸歯状の歯がある(以上は平凡社「世界大百科事典」に拠った)。因みにカラフルで美しいグーグル画像検索「Faviaもリンクしておく。

「腦珊瑚」キクメイシ科ノウサンゴ属 Platygyra の仲間若しくはその代表種であるノウサンゴPlatygyra lamellina を指す。ノウサンゴ(英名:brain-coral)は駿河湾から南太平洋にかけて広く分布する造礁サンゴの重要な一種で、盤状または塊状の群体を形成し、大きなものでは直径一メートルを超えるものもある。潮通しのよい浅瀬のサンゴ礁域を好むが、北は北海道まで分布を広げてもいる。莢壁に囲まれた莢孔は長く畝って全体がヒトの大脳のような形状を呈する。隔壁は一センチメートルに十二~十八本ある。昼間はポリプを伸ばさず、緑色の莢孔内に隠れているが、夜になると活動を始めて半透明の触手を数センチ突出させる(以上は主に平凡社「世界大百科事典」に拠る)。]

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