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2014/02/26

食ひそこなつた僕   山之口貘

 食ひそこなつた僕

 

僕は、何を食ひそこなつたのか!

 

親兄弟を食ひつぶしたのである

女を食ひ倒したのである

僕をまるのみしたのである

 

どうせ生きたい僕なんだから何を食つても生きるんだが

食へば何を食つても足りないのか

いまでは空に脊を向けて

物理の世界に住んでゐる

泥にまみれた地球をかじつてゐる

 

地球を食つても足りなくなつたらそのときは

風や年の類でもなめながら

ひとり、宇宙に居のこるつもりでゐるんだよ


[やぶちゃん注:【2014年6月14日追記:ミス・タイプを補正し、思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証により注を附した】初出は昭和一〇(一九三五)年九月号『行動』(紀伊国屋出版部発行)に後の「光線」と同時掲載され、二年後の一九三七年十月八日附『琉球新報』に『山之口バク詩集より』として再掲されているが、この時未だ処女詩集「思辨の苑」は刊行されていないから、これは未刊詩集からという謂いになる(同詩集の刊行は翌一九三八年八月)。「定本 山之口貘詩集」では、


 食ひそこなつた僕


僕は、何を食ひそこなつたのか!


親兄弟を食ひつぶしたのである

女を食ひ倒したのである

僕をまるのみしたのである

どうせ生きたい僕なんだから何を食つても生きるんだが

食へば何を食つても足りないのか

いまでは空に脊を向けて

物理の世界に住んでゐる

泥にまみれた地球をかじつてゐる


地球を食つても足りなくなつたらそのときは

風や年の類でもなめながら

ひとり 宇宙に居のこるつもりでゐるんだよ


と、第一連と第二連が繋がって、最終行の読点が除去されている。]

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