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2014/02/22

再會   山之口貘

 再會

 

詩人をやめると言つて置きながら詩ばつかりを書いてゐるではないかといふやうに

つひに來たのであらうか

失業が來たのである

 

そこへ來たのが失戀である

寄越したものはほんの接吻だけで どこへ消えてしまふたのか女の姿が見えなくなつたといふやうに

 

そこへまたもである

またも來たのであらうか住所不定

 

季節も季節

これは秋

 

そろひも揃つた昔ながらの風體達

どれもこれもが暫らくだつたといふやうに大きな面をしてゐるが

むかしの僕だとおもつて來たのであらうか

僕をとりまいて

不幸な奴らだ幸福さうに笑つてゐる

 

[やぶちゃん注:初出は昭和一一(一九三六)年十一月発行の『むらさき』。

 バクさんは昭和一二(一九三七)年十二月の静江との結婚前後(但し、正式な婚姻届の提出は昭和一四(一九三九)年十月二十六日)、それまで水洗便所のマンホール掃除や「東京材木新聞社」などを経て温灸器販売やニキビ・ソバカスの治療薬の通販の仕事などに従事していたものが、この同じ十二月に倒産失業はしている。しかしここではそれを「秋」と称していること(但し、これは実際の季節の「秋」ではない読みも可能ではあるし、実際には同年秋には実質上の失業状態にあったと考えてもおかしくはない)、結婚直後であるのに「失戀」と言っていること(但し、実際にこの前に貘さんは行きつけのコーヒー店の女給「そこ子」に正に「どこへ消えてしまつたのか女の姿が見えなくなつたといふやうに」見捨てられていること、前に示したように実際の婚姻届は出していないことからも「失戀」を語っても少しもおかしくはないとはいえる)など、幾分、事実との微妙な違和感がないわけではない。但し、暫くはこれは昭和十二年秋を舞台とした創作と考えてよかろう。

 原書房刊「定本山之口貘詩集」では一行目が、

 

詩人をやめると言つて置きながら 詩ばつかりを書いてゐるではないかといふやうに

 

に、六行目が、

 

寄越したものはほんの接吻だけで どこへ消えてしまふたのか 女の姿が見えなくなつたといふやうに

 

に改稿されている。【2014年6月7日追記】思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証した際、ミス・タイプを発見本文を訂正した。

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