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2014/03/08

飯田蛇笏 靈芝 昭和四年(三十七句)

 昭和四年(三十七句)

 

苑の端の木立おもてや初霞

 

慾無しといはるゝ君や春袋

 

[やぶちゃん注:「春袋」は「はるぶくろ」と読み、女児が新年に縫い初めに作る袋。平安以降の風習で、「春」に袋が「張る」ほど一杯に幸せを詰めて縫うという縁起をかついでいるという。嘉永元(一八四八)年板行の「季寄新題集」には『巾着財布の類を祝ふて縫ふことなり』とあるので縫った袋は元来は財布であったと思われ、ここでもそれらしい雰囲気がする。新年の季語。]

 

花がるた夜々のおもゝち愁ひあり

 

肅として閨中の灯や花がるた

 

早春の日のとろとろと水瀨かな

 

[やぶちゃん注:「とろとろ」の後半は底本では踊り字「〱」。]

 

春立つや山びこなごむ峽つゞき

 

溪橋に見いでし杣も二月かな

 

春さむき月の宿りや山境ひ

 

行くほどにかげろふ深き山路かな

 

巖苔もうるほふほどの雪間かな

 

ほど遠く深山風きく雪解かな

 

[やぶちゃん注:「山廬集」では「山庵即事」という前書を持つ。]

 

天氣よき水田の畔を燒きはじむ

 

撃ちとつて艶なやましき雉子かな

 

雨降るや鮠ひるがへる池の底

 

春蘭の花とりすつる雲の中

 

後架にも竹の葉降りて薄暑かな

 

露涼し鎌にかけたる葛の蔓

 

空蟬をとらんと落す泉かな

 

首なげて帰省子弱はる日中かな

 

夏帽に眼の黑耀や戀敵

 

[やぶちゃん注:「黑耀」は「こくえう(こくよう)」と音読みしているか。黒光り。面白い句である。]

 

おもざしのほのかに燈籠流しけり

 

雲ふかく結夏の花の供養かな

 

[やぶちゃん注:「結夏」は「けつげ」と読み、安居(あんご)開始又はその開始日をいう。安居は元来はインドの僧伽に於いて雨季の間は行脚托鉢を休んで専ら阿蘭若(あらんにや。寺院)の内に籠って座禅修学することを言った。安居は別に雨安居(うあんご)・夏安居(げあんご)ともいい、本邦では雨季の有無に拘わらず行われ、多くは四月十五日から七月十五日までの九十日を当てる。これを「一夏九旬」と称して各教団や大寺院では種々の安居行事がある。安居の開始を結夏、終了を解夏(げげ)というが、解夏の日は多くの供養が行われて僧侶は満腹するまで食べることが出来る。(平凡社「世界大百科事典」の記載をもとにした)。]

 

水向や貧一燈につかまつる

 

[やぶちゃん注:「水向」は「みづむけ(みずむけ)」で広義には一般に霊前に水を手向けることをいうが、狭義の季語としては御魂祭・祖霊祭・精霊を祀る盆の異名。]

 

墓に木を植ゑたる夢も初秋かな

 

秋風や水薬をもる目分量

 

秋霖や蕨かたむく岨の石

 

[やぶちゃん注:「岨」は「そは(そわ)」又は「そば」と読む。「稜(そば)」と同語源で古くは「そは」と読む。山の切り立った険しい崖や絶壁などをいう。]

 

高西風に秋闌けぬれば鳴る瀨かな

 

秋の繭しろじろ枯れてもがれけり

 

[やぶちゃん注:「しろじろ」の後半は底本では踊り字「〲」。]

 

送行の雨又雲や西東

 

[やぶちゃん注:「送行」は唐音で「そうあん」と読む。先に注した夏安居が終わって(解夏(げげ)、修行僧が各地に行脚のために別れ行くことをいう。秋の季語。]

 

雲霧や嶽の古道柿熟す

 

杣山や高みの栗に雲かゝる

 

寒風呂に上機嫌なる父子かな

 

冬霞む鳶の鳴くなり五百重山

 

[やぶちゃん注:「五百重山」は「いほへやま」と読む、万葉以来の上代語。重なり聳え立っている山々の意。]

 

冬雲や峯木の鴉啞々と鳴く

 

[やぶちゃん注:「峰木」には「山廬集」では「オネギ」とルビを振る。]

 

寂として座のあたゝまる火鉢かな

 

野鶲のすこし仰向く風情かな

 

[やぶちゃん注:「鶲」既注。「ひたき」と読む。スズメ目スズメ亜目スズメ小目ヒタキ上科ヒタキ科 Muscicapidae に属する鳥類の総称。]

 

  永井ノ偸伽寺

小雪や古り枝垂れたる糸櫻

 

[やぶちゃん注:「永井ノ偸伽寺」フェイスブックの知人が、これは山梨県笛吹市八代町永井にある臨済宗向嶽寺派の無碍山瑜伽寺(ゆかじ)であると情報を寄せて呉れた。]

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