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2014/03/02

靑空に圍まれた地球の頂点に立つて   山之口貘

 靑空に圍まれた地球の頂点に立つて

 

おさがりなのである

衣類も食物類も住所類もおさがりなのである。

よくも搔き集めて來たいろいろのおさがり物なのである

ついでに言ふが

女房といふ物だけはおさがり物さへないのである

中古の衣食住にくるまつて蓑蟲のやうになつてはゐても

欲しいものは私もほんとうに欲しいのである

まつしぐらに地べたを貫いて地球の中心をめがける埀直のやうに

私の姿勢は一匹の女を狙つてゐるのである

引力のやうな情熱にひつたぐられてゐるのである

ひつたぐられて胸も張り裂けて手足は力だらけになつて

女房女房と叫んでゐるので唇が千切れ飛んでしまふのである

妻帶したら私は、女房の足首を摑んでその一塊の體重を肩に擔ぎあげたいのである

機關車・電車・ビルデイング・煙突など街の體格達と立ち並んで汗を拭き拭き私は人生をひとまはりしたいのである

靑空に圍まれた地球の頂點に立つて

みるみる妻帶する私になつて兵卒の禮儀作法よりももつとすばやく明つきりと

『これは女房であります』と言つてしまつて

この全身を私は男になり切りたいのである。

 

[やぶちゃん注:【2014年月日追記:思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証した際、ミス・タイプを発見、本文を訂正、さらに注を全面改稿した。】初出は昭和四(一九二九)年四月発行『現代詩評』第二号で先の「解體」とともに掲載された。

 原書房刊「定本 山之口貘詩集」では句読点が除去されて最後の句点以外が字空けとなり(「妻帶したら私は、」の読点は以下参照)、さらに七行目が、

欲しいものは私もほんたうに欲しいのである

に訂され、十三行目が、

妻帶したら私は

女房の足首を摑んでその一塊の體重を肩に擔ぎあげたいのである

と「妻帶したら私は、」の読点が除去されて残りが新たに改行されて独立し、その次の行も、

機關車・電車・ビルデイング・煙突など 街の體格達と立ち並んで汗を拭き拭き私は人生をひとまはりしたいのである

と「煙突など」の跡に新たな字空けが施されてある。十六行目が、

みるみる妻帶する私になつて兵卒の禮儀作法よりももつとすばやくはつきりと

と「明つきりと」の表記が改められてある。

 個人的にとても好きな詩である。なお、勘違いしてはいけないが、バクさんが静江さんと結ばれるのは昭和一二(一九三七)年の十月、バクさんがかく叫んでからも、実に八年の歳月が必要であったのである。]

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