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2014/03/26

萩原朔太郎「ソライロノハナ」より「午後」(5) たそがれ Ⅱ



何やらん我が若者は白壁に

かくれ語りす雪どけの朝

 

始めての床に女を抱く如き

ものめづらしき不安なるかな

 

[やぶちゃん注:朔太郎満二十三歳の時の、『スバル』第二年第一号(明治四三(一九〇二)年一月発行)に掲載された連作の一首、

 始めての床に女を抱く如きものめづらしき怖れなるかな

の類型歌。]

 

八疊の柱どけいのちくたくと

母の忍ばゆ家を思へば

 

春の夜は芝居の下座(げざ)のすりがねを

たゝく男もうらやましけれ

 

[やぶちゃん注:前に同じく『スバル』第二年第一号に前の一首に続けて載る、

 春の夜は芝居の下座のすりがねを叩く男もうらやましけれ

の表記違いの相同歌。]

 

祭の日寢あかぬ床に寺々の

鐘きく如きものゝたのしさ

 

[やぶちゃん注:同じく『スバル』第二年第一号に前の一首に続けて載る、

 祭の日寢あかぬ床に寺寺の鐘きく如きもののたのしさ

の表記違いの相同歌。]

 

民はみなかちどきあげぬ美しき

捕虜(とりこ)の馬車のまづみえしとき

 

[やぶちゃん注:朔太郎満二十三歳の時の、『スバル』第二年第四号(明治四三(一九〇二)年四月発行)に掲載された連作の一首、

 民はみなかちどきあげぬ美しき捕虜(とりこ)の馬車のまづ見えしとき

の表記違いの相同歌。]

 

幼き日パン買ひしに行きしその店の

額のイエスの忘られぬかな

 

[やぶちゃん注:「幼き」の「幼」の字は原本で「力」が「刀」であるが、誤字と断じて校訂本文同様に「幼き」とした。「買ひしに行きし」の「買ひし」の「し」はママ。校訂本文は誤字(衍字)として除去している。以下の先行作から見ても衍字の可能性が極めて強いが、敢えてここはママとする。前に同じく『スバル』第二年第四号に掲載された連作の一首、

 幼き日パン買ひに行きし店先の額のイエスをいまも忘れず

の類型歌。]

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