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2014/04/09

すれちがいの娘   山之口貘

 

 すれちがいの娘

この途はここから

でこぼこになり

赤みをおびながら

曲りくねって

松林の中へと這いつくばっているのだ

村の人たちはいつもながら

じぐざぐにこの途を歩いて行って

この途をじぐざぐに歩いて帰り

牛車も馬車もがた揺れの音を立てるのだ

ある日このでこぼこを

あっちへ曲りこっちに曲りして

ハイヒールとやらに出会したのだが

すれちがいの挨拶に

ふと気がついてみると

野良着の姿でしか見かけなかった

西の家の娘なのだ 

 

[やぶちゃん注:【2014年7月8日追記:思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証済。注を改稿した。】初出は昭和二七(一九五二)年二月一日発行の二月号『小説新潮』。松下博文氏の「稿本・山之口貘書誌(詩/短歌)」のデータによれば、草稿の詩題は「路上」を「すれちがひの娘」と直してあるらしい。すえ(初出は同年三月号『小説新潮』)西家」(初出は同年三月一日発行の三月特別号『群像』)と登場人物の強い連関性からこの「鮪に鰯」の中にあっては特異な連作詩の様相を呈している。『鮪に鰯』に収録されなかった詩篇東の家と西の家、後の方に出る詩篇「家」などの詩や私の注も参照されたい。]

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