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2014/04/14

橋本多佳子句集「信濃」 昭和二十年 Ⅶ

 九州路

 

着きてすぐ別れの言葉霧の夜

 

門司と讀み海霧卷ける街に出る

 

夜の霧に部屋得て窓に港の燈

 

[やぶちゃん注:「燈」は底本の用字。]

 

筑紫路や鐡路も墓も石蕗(つは)さかり

 

波あがる崖そひの道石蕗の照り

 

宿ありて夜霧博多の町歸る

 

[やぶちゃん注:昭和二十年の年譜には、『冬、農地改革が行われるに当たり、九州大分にある農園の後始末のために次女の国子と行く。京都駅に配置された貨車に乗り、九州までの長旅を揺られて行』ったが、いざ着いてみると『夫の残した大分農場の荒廃に驚く』とある。当時、多佳子四十六歳であった。この大分農場とは、底本年譜の豊次郎と多佳子が結婚した大正六(一九一七)年の条に豊次郎の事蹟を載せる中に、『豊次郎は、結婚記念に大分農場(十万坪)を拓き経営。これは青年時代の夢の実現であ』ったと記すものである。

……さても……私は今、山之口貘の詩の電子化をもここで並行して行っているが……借金だらけの貧乏詩人(バクさんの方が四つ年下)と戦前の優雅な生活が次第に奪われてゆく寡婦多佳子(といっても転落でも斜陽でもないのであるが)と……それぞれにそれぞれの何かしみじみとした人生ではある、という気がする……]

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