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2014/04/05

萎びた約束   山之口貘

 萎びた約束

 

結婚したばかりの若夫婦の家なので

お気の毒とはおもいながらも

二カ月ほどのあいだをと

むりにたのんでぼくの一家を

この家の六畳の間においてもらったのだ

若夫婦のところにはまもなくのこと

女の子が生れたので

ぼくのところではほっとしたのだ

つぎに男の子が生れて

ぼくのところではまたほっとしたのだ

現在になってはそのつぎのが

まさに生れようとしているので

ぼくのところではそのうちに

またまたほっとすることになるわけなのだ

それにしてもなんと

あいだのながい二カ月なのだ

すでに五年もこの家のお世話になって

萎びた約束を六畳の間に見ていると

このまま更にあとなんねんを

ぷらすのお世話になることによって

いこおる二カ月ほどになるつもりなのかと

ぼくのところではそのことばかりを

考えないでは一日もいられないのだが

いつ引越しをするのかとおもうと

お金のかかる空想になってしまって

引越してみないことには解けないのだ

 

[やぶちゃん注:【2014年7月6日追記:思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証した結果、旧全集のミスを発見、本文を訂正した。】思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」では末尾に句点があり、旧全集にはない。これは旧全集のミスと判断し、最後に句点を配した。初出は昭和二九(一九五四)年七月特大号『群像』。叙述から見て、東京都の職業安定所勤務を辞し、詩人としての生活に入った昭和二三(一九四八)年(辞職は三月)の七月、一家で妻静江さんの茨城の実家から上京、練馬区貫井町の月田家に間借りしたとある年譜記載のそれが、このお宅かと思われる。そうだとすると、この「すでに五年もこの家のお世話になって」という謂いと発表年はだいたい一致する。]

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