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2014/04/05

柄にもない日   山之口貘

 柄にもない日

 

ぼくはその日

借りを返したのだが

ぼくにしては似てもにつかない

まちがったことをしたみたいな

柄にもない日があるものだ

だから鬼までがきまりわるそうにし

ぼくの返したその金をうけとりながら

おかげでたすかったと

礼をのべるのだ


[やぶちゃん注:【2014年7月3日追記:思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証によって清書原稿との違いが見出されたので、以下の注記を追加した。】初出は昭和二九(一九五四)年九月一日発行の『小説新潮』。清書原稿を底本とした思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」では、六行目が、「だから鬼までがきまりわるそうにして」と最後に接続助詞「て」が附されてある。煩を厭わずに以下に全詩を示す。

 

 柄にもない日

 

ぼくはその日

借りを返したのだが

ぼくにしては似てもにつかない

まちがったことをしたみたいな

柄にもない日があるものだ

だから鬼までがきまりわるそうにして

ぼくの返したその金をうけとりながら

おかげでたすかったと

礼をのべるのだ

 

これは実際に朗読してみると分かるが、接続助詞「て」があった方が断然よい。「柄にもない日があるものだ」で詩の前半のブレイクがあるのは無論だが、後半部はその鏡像のようにコーダまでスムースに進まねばならない。ところが「だから鬼までがきまりわるそうにし」という連用中止ではその仕草と、次行の「ぼくの返したその金をうけと」るという動作が並列関係(対句関係)になって、小さなブレイクがそこに生じてしまうからである。]

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