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2014/05/27

自分   山之口貘

 自分

 

數多の精蟲に打ち勝ちし我は

今自分の生の初めをかへり見る

おゝ 冷たく感ずる危機の刹那

――ほつと吐き出すさだめの溜息

生の中で流汗絶えず――

コツコツして居る自分

これが我に如何ほどの幸福であらう

生れ出づる歡喜!!

嗚呼生れ出し我は

勝利者どもの競爭の巷に

第二の爭鬪をせねばならぬ――

おゝ麗しき美術の持主よ

     (將來の我に云ふ)

汝の愛しい美術に……

鍛へ鍛ふよりのこの腕もて

數多の勝利者達よ油斷なく進め

おゝ然らば自身を我は

赤い日の下で――――

汗は止め難き――――

汝等の力の

幾百倍の源を穿つて

寒き日にもまたどんな日も

汗かいて汗かいて

すべての頭を踏みにじり

得難い……好きな――

美術の持主に

 

[やぶちゃん注:底本では末尾に下インデントで『一九二一・六・二四』とある。前の「私の務」と同日の創作で、同じく大正一〇(一九二一)年八月十一日附『八重山新報』に二篇が並載されたものと思われる。但し、この詩にのみ「佐武路」のペン・ネームを附す(巻頭だからか。

 このペン・ネームは本名の山口重三郎の名の「三郎」に由来するものか。

 旧全集年譜の、この詩の発表より二年前の大正八(一九一九)年の条に『この頃、仲村渠らっと文芸同人誌「ほのほ」を、宮古島出身の下地恵信らとガリ版刷りの同人誌「よう樹」を創刊。ペンネーム山之口サムロ』とあるから、これは「さぶろ」ではなく「さむろ」と読むものらしい。

 因みに、この仲村渠(明治三八(一九〇五)年~昭和二六(一九五一)年)は「なかむら かれ」と読む。那覇生まれの詩人で本名は仲村渠致良(「なかんだかり ちりょう」又は「なかんだかれ ちりょう」と読むものと思われる。「仲村渠」はこの三文字で苗字であって沖縄独特のものである)。「琉球新報」公式サイト「沖縄コンパクト事典」の仲村渠によれば、北原白秋主宰の『近代風景』に参加、昭和七(一九三二)年頃、詩人グループ『榕樹』派(先に出たガリ刷同人誌か)を結成、戦後は『うるま新報』記者とある(下地恵信は不詳。)。

 「コツコツ」の後半は底本では踊り字「〱」。既に述べたように、この翌年の秋、バクさんは画家を志して上京する。

 冒頭「數多の精蟲に打ち勝ちし我は」で始まる激烈にしてストイックなこの一篇、私には――バクさんの「雨ニモ負ケズ」――であるように感じられる。]

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