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2014/06/21

生物學講話 丘淺次郎 第十一章 雌雄の別 二 解剖上の別 (1)

     二 解剖上の別

 

 外形では雌雄の別がないよやうでも、身體を切り開いて内部を見ると、直に雌雄の知れる動物もなかなか多い。昔から「誰か鳥の雌雄を知らんや。」といふが、これは烏を解剖せぬ人のいふことで、腹を切り開けば、雌雄は誰にも直にわかる。雌ならば卵粒の明な卵巣と太い輸卵管とがあり、雄ならば一對の睾丸と細い輸精管とがあつて、その差が極めて明らかであるから、決して間違へる氣遣ひはない。鳥類には雞・「くじやく」などの如く雌雄によつて形の違ふもの、「きじ」・鴨などの如く色の違ふものもあるが、烏のやうに雌雄の全くわからぬものも頗る多い。「わし」・「たか」・「ふくろふ」の如き食肉鳥、文鳥・「カナリヤ」の如き小鳥類、鶴・「さぎ」等の如き水鳥類も多くは雌雄全く同色同形で、たとひ僅小の相違があつても、素人にはわからぬ位のものである。蛙・蛇・龜の類も外形では雌雄の區別がわからぬことが多く、魚類なども殆ど全部雌雄同じやうに見える。尤も雌は卵のために腹の膨れて居ることが多いから、腹の丸さ加減で雌雄の鑑定の出來る場合もある。いづれにしても、これらは一寸腹を切り開いて見さへすれば雄か雌か直に知れる。さてかやうな動物では受精は如何にして行はれるかといふに、水中と陸上とでは大に違はざるを得ない。前に述べた通り、水中に住む動物では、雄と雌とが別々に吹き出した生殖細胞が水中で隨意に出遇ふことが出來るが、陸上に産卵する動物では、そのやうな體外受精は到底行はれぬ。植物ならば、花粉が風に吹き飛ばされて遠方まで空中を運ばれることがあるが、動物の精蟲は乾けば忽ち死ぬから、液體外に出ることが出來ず、隨つて卵細胞に達するまで絶えず濡れ續けて居なければならぬ。それ故陸上の動物では、精蟲は必ず何らかの方法で雄の體から雌の體へ直に移し入れる必要がある。外形上雌雄の別のわからぬやうな動物の受精の方法を見ると、實際體外で受精するものと、體内で受精するものとがあり、體外で受精するものは悉く水中で産卵する種類のみに限つて居る。

Uokoubi

[魚の交尾の一例]

 親の身體を出てから、卵と精蟲とが水中で出遇ふことの難易は、兩親の居る場處が互に遠いか近いかによつて非常に違ふ。互に遠く相隔つた處で、一方では卵を、一方では精蟲を吹き出したのでは、その間に受精の行はれる望は極めて少ないが、接近した處で同時に、生殖細胞を吹き出せば、殆ど全部受精することが出來よう。それ故、體外受精をする動物は多くは一箇處に群居して居るもので、「うに」などの如きも、小船から覗いて見ると、淺い海底の岩の凹みに幾つとなく列んで居る。しかしこれは雌雄相近づくために、わざわざ遠方から集まつて來たのではなく、たゞ同じ處に育つたものである。魚類の如き運動の自由なものになると、これと違ひ同じく體外受精が行はれるのであるが、産卵期になると雄は雌を追うて接近し、雌の産卵すると同時にこれに精蟲を加へようと努める。金魚や「ひごひ」を鉢に飼うて置いても、卵を産む頃になると雄が頻に雌を追ひ掛けて游ぎ廻るが、これはたゞ生まれた卵に直に精蟲を注ぐためであつて、決して眞の交尾が行はれるのではない。「さけ」などは日ごろは深い海に住みながら、産卵の季節が近づくと遠く河を遡つて淺い處まで達し、尾で砂利を掘つて凹みを造り、そこで雌が卵を産めば雄が直に精蟲を加へる。その頃の鮭は卵も精蟲も共に十分に成熟して、生まれるばかりになつて居るから、手で體を握つて腹を搾れば直に溢れ出るが、かくして出した卵と精蟲とを水中で混じ、なほ淸水中に飼うて置くと漸々發育して終に幼魚となる。これは「さけ」の人口孵化法と稱して、今日處々で「さけ」を殖やすために行うて居るが、このやうなことは無論體外受精をする動物でなければ行はれぬ。尤も稀には普通の魚類にも眞に交尾するものがある。こゝに示したはその一例で、直立しているのは雌、卷き付いて居るのは雄であるが、雄と雌とは生殖器の開口を密接せしめるから、精蟲は少しも水中に出ることなしに直に雄の體から雌の體に移り入ることが出來る。また鰻は「さけ」とは反對で、つねには河や池に居るが、卵を産みに海まで降るもの故、人工的に受精せしめることは到底望まれぬ。養魚場に飼うて居る鰻は、すべて幼いときに捕へたものに餌を與えて生長させるだけに過ぎぬ。鰻は胎生すると言ひ傳えて居る地方もあるが、これは腹の内にいる蛔蟲類の寄生蟲を、「鰻の子」であると早合點したためで、全く觀察の誤である。

[やぶちゃん注:「普通の魚類にも眞に交尾するものがある」例えば条鰭綱新鰭亜綱棘鰭上目カサゴ目カサゴ亜目フサカサゴ科 Scorpaenidae(又はメバル科 Sebastidae とも)メバル亜科カサゴ Sebastiscus marmoratus が体内受精を行い、卵胎生で仔魚を産むことが知られている。相原岳弘氏撮影になるカサゴの交尾 大瀬崎」ではこの図に酷似した交尾行動を動画で見ることが出来る。必見。

「鰻は」「人工的に受精せしめることは到底望まれぬ」ウィキの「ウナギ」によれば、『ウナギの人工孵化は1973年に北海道大学において初めて成功し、2002年には三重県の水産総合研究センター養殖研究所(現「増養殖研究所」)が仔魚をシラスウナギに変態させることに世界で初めて成功し』てはいるものの、『人工孵化と孵化直後養殖技術はいまだ莫大な費用が掛かり、成功率も低いため研究中で、養殖種苗となるシラスウナギを海岸で捕獲し、成魚になるまで養殖する方法しか商業的には実現していない。自然界における個体数の減少、稚魚の減少にも直接繋がっており、養殖産業自身も打撃を受けつつある。そうした中での2010年、水産総合研究センターが人工孵化したウナギを親ウナギに成長させ、さらに次の世代の稚魚を誕生させるという完全養殖に世界で初めて成功したと発表』、『25万個余りの卵が生まれ、このうち75%が孵化したと報じており、先に述べた稚魚の漁獲高減少もあって、期待を集めている。だが、孵化直後の稚魚の餌の原料にサメの卵が必要で、毎日水を入れ替えなければならず、人工環境ではほとんどオスしか生まれないため産卵のためにホルモンによるメス化が必要など、コスト面で課題が多く残されている』。『2013年には、プランクトンの糞や死骸が餌となることが突き止められた。また、鶏卵やヤマメの精巣も餌になることが判明し、幼生は約9割が育つまでになった。しかし、2013年の現状ではシラスウナギ1匹にかかるコストは飼料代、設備投資、人件費、光熱費など1000円以下では無理だといわれて』おり、『環境庁は、実用化には2020年ごろまでかかると発表している』とある(但し、最後コストと実用化の記述部分には要出典要請が示されてある)。

「腹の内にいる蛔蟲類の寄生蟲」「水産食品の寄生虫検索データベース」(リンクをした場合に通知を要請しているのでリンクしない)やウナギ料理のサイトなどによれば、内臓部への寄生でウナギの子と誤認され易いと思われるものはウナギの鰾(厳密には鰾腔内)に寄生する線形動物門双腺綱旋尾線虫目カマラヌス亜目トガリウキブクロセンチュウ Anguillicoloides crassus 辺りかと思われる。天然ウナギには多量に寄生するが、調理によって死滅するので問題なく、そもそも人体には寄生しないとある。また、ウナギ専門の料理人のネット上の経験談では、「鰻の子」と誤認されたもので過去に何度か見たことはあると表現上の温度差がある(養殖の場合は寄生数は少ないのかも知れない)。その実見談では五~六センチメートルとあり、データベースの記載とも一致する。但し、そういう情報とは別にウナギの胃腔内に多く寄生する扁形動物門吸虫綱二生吸虫亜綱アジゲア目 Azygiida の一種がいるようだが、画像を見る限りでは、「鰻の子」のようには見えず、寄生部位からも誤認しにくいように私には思われた。]

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