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2014/06/03

橋本多佳子句集「紅絲」 冬の旅 Ⅰ 九州路

 冬の旅

 

  九州路

 

   わが農園、国家に買上げとなる、九州へ

   赴くこと度々

 

冬霧ゆる船笛やわが在るところ

 

冬の航はじまる汽笛あふれしめ

 

海渡る黒き肩かけしかとする

 

大綿は手に捕りやすしとれば死す

 

[やぶちゃん注:「大綿」は「おほわた(おおわた)」で、綿虫の俗称。綿虫は半翅(カメムシ)目腹吻亜目アブラムシ上科アブラムシ科 Aphididae に属する綿油虫類の総称で、白い綿のような分泌物を体に附着させた状態で弱々しく飛ぶ。体長は二ミリメートル程で大種でも四ミリメートル程度。 北国ではこの虫が飛ぶと雪が近いとし、また舞う様が雪のようでもあることから雪虫の俗称を持つ(この北方系種は Prociphilus 属トドノネオオワタムシ Prociphilus oriens )。]

 

真青な河渡り終へ又枯野

 

河豚を剝ぐ男や道にうづくまる

 

河豚の血のしばし流水にまじらざる

 

河豚の皿燈下に何も殘らざる

 

ジヤズに歩の合ひゐて寒き水たまり

 

河豚の臓(わた)喰べたる犬が海を見る

 

林檎買ふ旅の足もと燈に照らされ

 

星空へ店より林檎あふれをり

          (一九四七、一)

 

[やぶちゃん注:底本年譜の昭和二一(一九四六)年の条の最後に、『十万坪の大分農場は農地買い上げとなる。坪八十銭』とある。単純計算で計八万円、物価指数から現在の価値で約三百二十八万円相当にしかならない。しかも以前に注したように、この大分農場は亡き夫豊次郎と多佳子が結婚した大正六(一九一七)年にその結婚記念として開拓経営を始めた農場であって、豊次郎の青年時代からの夢を実現化したものでもあったから、多佳子にとっては亡き夫との思い出の地でもあったのである。「後記」からこの「九州路」の旅は昭和二二(一九四七)年であることが分かる。

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