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2014/06/21

萩原朔太郎「ソライロノハナ」より「何處へ行く」(21) 酒場の一隅より(Ⅰ)

 酒場の一隅より

 

薄暗き酒場の隅にあるひとが

我に教へし道ならぬこと

 

[やぶちゃん注:これは朔太郎満二十四歳の時、『スバル』第三年第四号(明治四四(一九〇三)年四月発行)に「萩原咲二」名義で掲載された一首、

 薄暗き酒場の隅に在るひとが我に教へし道ならぬ道

の表記違いの相同歌である。]

 

賭奕(ばくち)はも如何に樂しきその錢を

持ちて女を買ふは尚よき

 

[やぶちゃん注:「賭奕」はママ。]

 

くどくどと佛頂面にかのやから

何ごとを説く春の灯のまへ

 

あることを知らで言ひしが不覺にも

わが一生のあやまちとなる

 

もるひねを計(はか)りあたへよぴすとるを

のんどにあてよたれかとくせよ

 

あゝ遂に今日も死にえずぴすとるを

ふところにして酒店に入る

 

學校を追はれし我がさかしげに

世を罵れば親はまた泣く

 

悲しきは生をしたへる執心が

また一方に死を願ふこと

 

我をよく誰れか如何にととかせよ殺すとか

あるひは活かすとかいづれにかせよ

 

[やぶちゃん注:「あるひは」はママ。]

 

人竝に可笑しきことも言ひ居れば

誰れか知るらん死を願ふ子と

 

酒を飮むその時の外の我を見れば

生きてあるごとし死にてあるごとし

 

醉ひどれの臭き息をば酒のまぬ

ときに嗅ぐより悲しきはなし

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