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2014/08/31

橋本多佳子句集「海彦」 老いまでの日の

 老いまでの日の

 

  上京して

 

衣更前もうしろも風に満ち

 

衣更老いまでの日の永きかな

 

駅燈に照らされて巣の燕寝し

 

  武蔵野の三谷昭氏新居を訪ひて

 

旅のひざ仔猫三つの重さぬくさ

 

[やぶちゃん注:三谷昭(明治四四(一九一一)年~昭和五三(一九七八)年)は俳人。素人社や実業之日本社などで編集者を勤める傍ら、『走馬灯』『京大俳句』などに加わり、昭和一五(一九四〇)年の京大俳句事件で検挙された。戦後は『天狼』『面』同人。現代俳句協会初代会長。多佳子より十二歳年下である(講談社「日本人名大辞典」に拠った)。句を掲げる。

 ある街の木瓜の肉色頭を去らず

 わが一生女はいつも野火に似て

 暗がりに檸檬泛かぶは死後の景]

 

単衣着て足に夕日のさしゐたり

 

蓮散華美しきものまた壊る

 

飛燕の下母牛に乳溜まりつゝ

 

嫗の身風に単衣のふくらみがち

 

[やぶちゃん注:順列と季語から見て、昭和二八(一九五三)年の夏の句。当時、多佳子五十四。]

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