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2014/10/02

白き顏   萩原朔太郎

[やぶちゃん注:底本の筑摩版全集第二巻の「習作集第八巻(愛憐詩篇ノート)」より。クレジットはないが、前の詩「鬼ごと」が末尾に「一九一三、四」の、後の短歌「うまごやし」が冒頭に「一九一三、四」のクレジットを持つから大正二年四月の作詩と考えてよい。特に「△」の使用は「鬼ごと」でもあって、強い親和性が窺われる。]

 

△白き顏

 

     △

夜つびとへ

その白き顏をみつめて居たりき

まどろみもせであかしたる

あさましき朝のつかれ

     △

いづこに行かん

家はあり

されど歸るべき家はなし

いづこに行かん

     △

友と別れたるあとの哀傷(かなしみ)

酒のさめたる後の哀傷

夜おそく

我家の門をくゞる時の哀傷

女と二人

淫らなることを終りたる折の哀傷

とりわけて

わがおこなひのあとさきを思ふ日の哀傷

     △

いたく醉ひはてたるとき

友は三味線をふり廻して居たりき

女の腕は蛇の如くわが頸にまとひつきて

邪淫の瞳は熱に燒えたり

あやふき哉一切那

友は三味線を風車の如くふり廻して居たりき

 

[やぶちゃん注:題名の頭の△は底本の編者注により復元した。「燒えたり」「一切那」はママ。孰れも校訂本文は「燃えたり」「一刹那」とする。]

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