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2014/10/16

杉田久女句集 291 菊ヶ丘 Ⅶ 英彦山雜吟 百十二句(昭和十二年) (後編)

かの絶唱

蝶追うて春山深く迷ひけり

はここに出る――



雉子

 

愛しさよ雉子の玉子を手にとりて

 

奪られたる玉子かなしめ雉子の妻

 

雉子かなし生みし玉子を吾にとられ

 

雉子たちし草分け見ればこの玉子

 

雉子鳴くや都にある子思ふとき

 

雉子の妻驚ろかしたる蕨刈

 

今たちし雉子の卵子を奪り來たり

 

杉の月佛法僧と三聲づゝ

 

若葉濃し雨後の散歩の快く

 

つなぎ牛遠ざけ歩む蓮華かな

 

南へは降りず躑躅を眺めけり

 

杉くらし佛法僧を目のあたり

 

  奉幣殿にて 一句外

 

疑ふな神の眞榊風薫る

 

病快し雨後の散歩の若葉かげ

 

杖ついて誰を待つなる日永人

 

平凡の長壽願はずまむし酒

 

物言ふも逢ふもいやなり坂若葉

 

會釋して通る里人蕨摘む

 

先生に逢うて蕨を分け入れし

 

燒けあとの蕨は太し二三本

 

歩みよる人にもの言はず若葉蔭

 

若葉蔭佇む彼を疎み過ぐ

 

宮ほとり相逢ふ人も夏裝ひ

 

よぢ下りる岩にさし出て濃躑躅

 

里の女と別れてさみし芽獨活掘る

 

やうやうに掘れし芽獨活の薰るなり

 

[やぶちゃん注:「やうやう」の後半は底本では踊り字「〱」。]

 

芹摘むや淋しけれどもたゞ一人

 

竹の子を掘りて山路をあやまたず

 

百合を掘り竹の子を掘る山路かな

 

百合を掘り蕨を干して生活す

 

ふと醒めて初ほとゝぎす二三聲

 

かたくりにする山百合を掘るといふ

 

魚より百合根がうまし山なれば

 

一人靜か二人靜かも摘む氣なし

 

杉の根の暗きところに一人靜か

 

彦山の天は晴れたり鯉幟

 

滿開のさつき水面に照るごとし

 

早苗束投げしところに起直り

 

雨晴れて忘れな草に仲直り

 

逢ふもよし逢はぬもをかし若葉雨

 

花散るなようらく躑躅心あらば

 

[やぶちゃん注:太字「ようらく」は底本では傍点「ヽ」。「ようらく躑躅」はツツジ目ツツジ科ヨウラクツツジ属 Menziesia のツツジの仲間。本邦産はコヨウラクツツジ(小瓔珞躑躅)Menziesia pentandra やウラジロヨウラク(裏白瓔珞)Menziesia multiflora などは七~八種がある(ウィキの「ヨウラクツツジ属」及びそのリンク先に拠る)。グーグル画像検索「Menziesia。]

 

日が照れば登る坂道鯉幟

 

菖蒲ふく軒の高さよ彦山(ひこ)の宿

 

美しき胡蝶なれども氣味惡く

 

秋蝶とおぼしき蝶の翅うすく

 

枯色の品よき蝶は蛇の目蝶

 

蝶追うて春山深く迷ひけり

 

[やぶちゃん注:久女の名吟として一読、忘れ難い句であるが、坂本宮尾氏の「杉田久女」(三二頁)によれば、この句、かく本句集の終りの方(終わりから五十六句目)に配されており、しかも後の編年式編集の角川書店昭和四四(一九六九)年刊「杉田久女句集」では昭和十年以降のパートに置かれてあるが、実は本句は、驚くべきことに、何と、久女が句作を初めて一年足らずの、『ホトトギス』大正六(一九一七)年七月号の「春の山十句集」に載ったものものであるとある。私は一種、イメージとしての久女の辞世として本句を措定しているが(この事実を知ってもそれは変わらないのであるが)、本句をものした当時の彼女は未だ二十七歳であったのである。]


美しき胡蝶も追はずこの山路

 

道をしへ法のみ山をあやまたず

 

道をしへ一筋道の迷ひなく

 

何もなし筧の水に冷奴

 

花過ぎて尚彦山の春炬燵

 

なまぬるき春の炬燵に戀もなし

 

風呂に汲む筧の水もぬるみそむ

 

風呂汲みも晝寢も一人花の雨

 

咲き移る外山の花を愛で住めり

 

梨花の月浴みの窓をのぞくなよ

 

窓叩く鮮人去りぬ梨花の月

 

日が出れば消ゆる雲霧峰若葉

 

田樂の燒けてゐるなる爐のほとり

 

田樂に夕餉すませば寢るばかり

 

田樂の木の芽をもつと摺りまぜよ

 

田樂の木の芽摺るなり坊が妻

 

苔庭に散り敷く花を掃くなかれ

 

石楠花に全く晴れぬ山日和

 

花の戸にけふより男子禁制と掟て棲む

 

垣間見を許さぬこの扉山櫻

 

風に汲む筧も濁り花の雨

 

ひろげ干す傘にも落花乾きゐし

 

齒のいたみ衰へ風邪も快く

 

石楠の恥ろふ如く搖れ交す

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