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2014/11/08

タルコフスキイに撮らせたい「ビェージンの草原」の1シークエンス

 一同はまた靜かになつた。パーウェルは枯枝を一つかみ火に放りこんだ。急に燃えあがる焰に枯枝はくつきりと黑く浮き出し、ばちばちと音を立て、煙をあげ、燒けた端の方をいくらか上にしながら反りはじめる。光の反射は、はげしくふるへながら、四方八方に、わけても上の方に伸びる。不意にどこからともなしに一羽の白い鳩が、まつしぐらに明るい光の中へ飛び下りて來て、燃えさかる火影な一ぱいに浴びながら、一ところをぐるぐると廻る。やがて翼を鳴らしながら消え失せる。
 「きつと家からはぐれちやつたんだ」とパーウェルがいふ、「だからどつかへ出るまで飛んで行つて、出たところで夜明かしをするんだらう」
 「でも、パウルーシャ、あれは正直な人間の魂が天へ昇つて行つたんぢやないかな、え?」
 パーウェルは火の中へ、もう一つかみの枯枝を差しくべる。
 「さうかも知んね」つひに彼もいふ。(「猟人日記」「ビェージンの草原」中山省三郎訳より)

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