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2014/11/08

コスチャがこの前夜に体験した怪異

コスチャが語り、パウルーシャが解き明かす怪奇現象。
 
 「おれが聞いたのはかうなんだよ。昨夜(ゆんべ)、俺は石山(カメンナヤグリヤダ)からシャシキノへ行つたんだ。初めはずつと胡桃林(くるみばやし)を通つて、それから草つ原にさしかかつた、――ほら、あの谷へ下りて行く險しい曲り角のあるとこだ、「ほら、春つからずつと水溜りがあるだらう。お前も知つてるだらうが、そこには葦が一杯に生えてるで、俺がその水溜りの傍を通つたら、どうだ、ふいっと水つ溜りん中から、誰だか悲しさうに、情けねえ聲で、うーう……うーう……うーう! つて唸る聲がするんだ。俺あ、おつかなかつたの何(なん)のつて、もう晩(おそ)いし、そいつがとても苦しさうな聲なんだもの。だから俺あ、本當に泣きつ面になつてたかも知れん……、一體、あれは何だつたかな? え?」
 「一昨年(おととし)、あの水つ溜りの中へ追剝ぎが山番のアキームを沈めちまつたんだ」とパウルーシャがいふ、「だからきつと、アキームの魂が泣いてるんだよ」
 「あ、ほんとにさうかも知んね」とコスチャが、それでなくても大きい眼を一そう大きくして相槌をうつた、「俺あ、アキームがあの水つ溜りに沈められたのを知んなかつた。知つてたら、あんなにたまげなかつたな」(「猟人日記」「ビェージンの草原」中山省三郎訳より)

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