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2014/12/02

日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第十六章 長崎と鹿児島とへ 夜の瀬戸内海を航く外輪船

M539

図―539 

 この日の午後、我々は長崎へ向う汽船に乗った。私は甲板から神戸と、背後の丘とを、急いで写生した(図539)。これ等の丘は九百フィートを越えぬといわれるが、汽船の船長はもっと高いと思うといった。航海はまことによかったが、瀬戸内海を通るのは夜になった。ここは世界で最も美しい航路の一とされている。夜甲板へ出て見たら、汽船は多数の漁船の傍を通っていた。漁夫たちは、我国の漁夫がブリキの笛を吹くように、貝殻の笛を吹き、燈火が無いので彼等は鉋屑(かんなくず)を燃したが、それは海面のあちらこちらで、気まぐれに輝くのであった。闇は測知し得ず、笛を吹き鳴らすことと、火光を閃めかすこととは、汽船が漁船と並行する迄続けられ、そこで一つ一つ、火は消え、騒ぎがやむ。かくの如くにして前面には、ここかしこに、この沢山の笛の奇妙な騒音と、燃え上る火とがあり、後方には音も聞えねば、火も見えぬ。まるで、汽船がそれ等を呑み込んで了つたかの如くであった。我々の汽船が外輪の音をはるか遠くに立て、衝突の危険を刻々近づけながら、近づいて来ることは、漁夫達にとっては大きに危懼すべきことであらねばならぬ。汽笛を鳴らし、外輪をバジャバシャいわせ、湯気や煙を出し燈火を輝かして汽船は勢よく過ぎて行く。船首からは巨大な波が梯陣をなして進軍して来る。そして、このような大きな怪物と衝突することの惨めな結果を考えると、船が横を通過するという事実だけでも、これは充分驚愕に価する経験である。

[やぶちゃん注:図539の山並みは明らかに六甲山脈中央、神戸港の背後にある摩耶山(まやさん)を描いている。「九百フィート」(二七四メートル)を越えないとあるが、摩耶山は標高七〇二メートル、手前にある丘陵や尾根も四百を越えるのでこの謂いは不審である。この夜の瀬戸内海を抜けて行く大型外輪船と、夜の漁に出ている漁師たちの映像は実に素晴らしい。彼らにとっては命懸けな訳だが、この法螺貝の音と篝火は何とも夢幻的である。

「梯陣」「ていじん」は、元来は、艦隊の組み方の一つで、各艦が進路を平行にとりながら、先頭艦の斜め後方の一線上に位置する隊陣をいう。ここはそうした形に左右に分かれる、大型船の船首が生じさせる波をそれに擬えた表現である。]

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