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2014/12/01

大和本草卷之十四 水蟲 介類 バカ貝

【和品】[やぶちゃん注:原本は「同」。]

バカ貝 ドブ貝ニ似タリ肉ハ食セズ只柱ヲ食ス本草有

馬軻螺曰白如蚌是ナルヘシ

〇やぶちゃんの書き下し文

【和品】[やぶちゃん注:原本は「同」。]

ばか貝 どぶ貝に似たり。肉は食せず、只だ、柱を食す。「本草」に『馬軻螺』有り、曰く、『白くして蚌のごとし。』と。是れなるべし。

[やぶちゃん注:斧足綱異歯亜綱バカガイ上科バカガイ科バカガイ Mactra chinensis 

「ドブ貝」本「大和本草卷之第十四」の「介類」で先行し、同種と認定出来るのは「蚌」で別名を「カラスガヒ」「トブ貝」とする種で、既に私は斧足綱古異歯亜綱イシガイ目イシガイ科イケチョウ亜科カラスガイGristaria Plicata 及び同属の琵琶湖固有種メンカラスガイCristaria plicata clessini (カラスガイに比して殻が薄く、殻幅が膨らむ)と、イシガイ科ドブガイ属 Sinanodonta に属する大型のヌマガイ Sinanodonta lauta(ドブガイA型)と、小型のタガイ Sinanodonta japonica(ドブガイB型)の二種に同定したものである。益軒は「トブ貝」と表記しているのが気になるかもしれないが、この濁点脱落は彼の書き癖で異種の可能性はない。にしても、私はドブガイと青柳(バカガイ)は殻の色も形状も似ているとは思わない。その方が問題である。寧ろ、だらっとした軟体部や内臓、斧足や貝柱以外の朱だった部分、またそれが美味くないという食味の点では似ているとは言える。

《「本草」に『馬軻螺』有り、曰く、『白くして蚌のごとし。』と。是れなるべし》」この部分を検証してみる。一見すると「馬軻」の文字列が「バカ」と読めてしまうことに於いて、寧ろ信じ難い印象を与えるからである。まず、「本草綱目」を見る。

   *

(「別錄」下品)

【釋名】

馬軻螺(「綱目」)、時珍曰珂、馬勒飾也。此貝似之。故名。徐表作馬軻。「通典」云老雕入海爲。即珂也。

【集解】

「別錄」曰珂生南海。采無時。白如蚌。

恭曰珂、貝類也。大如鰒、皮黃黑而骨白、堪以爲飾。

時珍曰按、徐表「異物志」云馬軻螺、大者圍九寸、細者圍七八寸、長三四寸。

【修治】

珂、要冬采得色白膩者、並有白旋水文。勿令見火、即無用也。凡用以銅刀刮末研細、重羅再研千下、不入婦人藥也。

【氣味】

鹹、平、無毒。

【主治】

目翳、斷血生肌(「唐本」消翳珍)。

【附方】

新二。

目生浮翳馬珂三分、白龍腦半錢、枯過白礬一分、研勻點之。(「聖惠方」)

面黑令白馬珂、白附子、珊瑚、鷹矢白等分、爲末。每夜人乳調敷、旦以溫漿水洗之。(同上)

   *

「廣漢和辭典」の「珂」の項には、四番目に『くつわ貝。螺(ラ)の一種。そのかいがらは外が黄黒色で、内側が白く、馬のくつわを飾るのに用いた』、五番目に『くつわ貝で作ったくつわの飾り』とあり、前者では「爾雅翼」から『貝の大なる者は、珂。皮は黄黑、骨は白く、馬具を飾るべし。一名、馬軻螺。』と引いている(引用部は書き下した)。

 これらを見ていると、何となく本邦のバカガイに似てくるから不思議である。

 そこで中文ウィキを調べてゆくと、バカガイ Mactra chinensis が、まさに中華馬珂蛤として記載されているのに行き当ったのである。

 「バカガイ」はその強烈な和名から由来説には事欠かない。ウィキバカガイには、以下の七説を掲げる。

・外見はハマグリに似ているものの、貝殻が薄く壊れやすいことから「破家貝」として名付けられたとする説。

・いつも貝の口をあけてオレンジ色をした斧足を出している姿が、あたかも口を開けて舌を出している「馬鹿」な者のように見えたとする説。

・一度に大量に漁獲されることがあるので、「『バカ』に(「非常に、凄く」の意)多く獲れる貝」の意でその名が付いたとの説。

・たくさん獲れた地域の名「馬加(まくわり)」(現在の幕張)を「バカ」と音読みし、「バカ貝」と呼ばれるようになったとする説。

・馬鹿がハマグリと勘違いして喜ぶ様から馬鹿が喜ぶ貝という意味であるとする説。

・蓋を閉じずに陸に打ち上げられて鳥に食べられてしまうことなどの行動から「バカ貝」と呼ばれるようになったとする説。

・頻繁に場所を変える「場替え貝」から来ているとする説。

 しかしその記載の右手の「和名」の欄に『バカガイ(破家蛤、馬珂蛤、バカ貝、馬鹿貝)』とあるのに気づくと、寧ろ、本邦の本草学者が本邦の当該種と大陸からもたらされた「本草綱目」などの本草書の「馬珂螺」を同一のものと推定し、その「馬珂」をそのまま音として移したとする方が遙かに私には納得がゆくように思われるのだが? 大方の御批判を俟つものである。

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