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2015/01/06

日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第十六章 長崎と鹿児島とへ ゴミ捨て場で貝類を採取

 この、気のめいるような食事の後で、私は助手を従えて、海岸と町の海堤とに添うて採集に行き、下僕二人は町の背後の丘へ、陸産の螺(にし)をさがしにつかわした。暑くてむしむしし、採集している中に我々は、この町の塵や芥を積み上げた場所へ来たが、これは最も並外れた光景なのである。我々は一種奇妙な二枚貝のよい標本を沢山と、腐肉を食う螺とを手に入れた。積み上げた屑物の中では、沢山のオカミミガイとメラムパスと、一つのトランカテラとを採つた。悪臭は恐しい程で、日本の町は一般に極めて清潔なのに、これはどうしたことだろうと、私は不思議に思った。帰る途中で郵便局へ寄ったら、日本語で「コレラが流行している、注意せよ!」と書いた警報が出ているのを見つけた。最も貧弱な日本食を食うべく余儀なくされたので、私の胃袋は殆ど空虚であり、また始終非常に咽喉がかわくので、ちょいちょい水をのみながら、私は残屑物の山をかきまわしていたのである。その日一日中、私は気持が悪かった。

[やぶちゃん注:これも原文を最初に総て示す。

   *

   After this depressing meal I took my assistant and went collecting along the shores and sea wall of the town, sending the two boys into the hills back of the town for land snails. It was hot and sultry, and in our collecting we came across piles of garbage and refuse of the town, a most unusual sight. We got many fine specimens of a peculiar bivalve and also some carrion-eating snails. We got a great many Auricula, Melampus, and one Truncatella in the refuse piles. The stench was dreadful, and I wondered at it, as Japanese towns are generally so clean. On our way back we went to the telegraph office, and there saw posted up in Japanese a warning notice which read, Cholera is now prevalent; be careful!  I must confess I felt uncomfortable the whole day knowing how I had exposed myself overhauling garbage heaps on a nearly empty stomach, compelled to live on Japanese food of the poorest quality, and so thirsty all the time that I had to drink water once in a while.

   *

 まず注意されたいのは、訳文の『帰る途中で郵便局へ寄ったら、日本語で「コレラが流行している、注意せよ!」と書いた警報が出ているのを見つけた。』の部分で、ここは厳密に言えば、

 

帰る途中で郵便局へ寄ったら、日本語で警報が出ているのを見つけた。「コレラが流行している、注意せよ」!

 

である。このエクスクラメンション・マークは警報の告示文にあるのではなく(考えて見ればこの当時の鹿児島の電信局の日本人向けの告知文に「!」が使われている考える方が不自然である)、モースの「オウ!」という感嘆を示すものだという点である。

「陸産の螺」原文は“land snails”。これはカタツムリ類とキセルガイ科 Clausliidaeのキセルガイ類のような殼の巻の細いものを含めた腹足綱有肺類 Pulmonata を広く指していると考えられる。

「この町の塵や芥を積み上げた場所」これがどのような場所なのかが不分明なために以下の貝類の同定も思いの外、難しい。但し、「海岸と町の海堤とに添うて採集に行き」と前書することから、このゴミ捨て場は町中ではなく、町の外れの海岸線に思いっきり近い位置にあるか、錦江湾に流れ込む溝か小川かの河口周辺ではないかと考えてよいのではないかと思っている。

「一種奇妙な二枚貝」人が食べた後の殻であろう。それにしても専門家のモースが「奇妙な」と形容しているのがひどく気になる。「二枚貝」と明記している以上は二枚貝らしい。これは一体、何だったのか? 錦江湾で採れる二枚貝で、食用になり、しかもモースが見たことがない変わった形態をした種――モースがスケッチを残して呉れなかったことが悔やまれる――これはちょっと宿題としたい。どなたか、ピンとくるものがあったらお教え戴きたい。

「腐肉を食う螺」これが難問である。まず、海岸に近いとしても、純然たる海産肉食性巻貝類で、かくも陸のゴミ捨て場まで上がって腐肉に群がるという種はちょっといない(モースが見たのは叙述からして生貝である。腐肉食の死貝の貝殻を採取したとしてもこんな書き方は彼は絶対にしない)。とすれば、腐肉食の陸生腹足類、有肺類ということになるが、私は陸産貝類は実は守備範囲になく、実はお手上げである。ただ、ウィキカタツムリの「餌」の項によれば(下線やぶちゃん)、『ほとんどの種は植物性のものを食べ、生の植物や枯葉などやや分解の進んだ植物遺骸などを食べるほか、菌類を餌とするもの、雑食性のものなどがあり、一般にやや広い食性をもつ。また建物壁面やガードレールなどの人工物の表面に発生した藻類も餌となり、その食痕は日常的に見ることができる。農作物や園芸植物を食べるウスカワマイマイやチャコウラナメクジは害虫として駆除の対象ともなる。多くの種がセルロースを分解吸収できるため、新聞紙やチラシなどの紙類もよく食べ、その場合には糞も元の紙の色になる』。『しかし中には他のカタツムリを捕食する肉食性の種もあり、米国南部原産の肉食種ヤマヒタチオビはアフリカマイマイの駆除のためにハワイや小笠原諸島、その他の太平洋諸島に人為的に移入された。しかしアフリカマイマイの駆除にはあまり役立たず、むしろこれらの島々の固有種を捕食して絶滅に一役買うこととなってしまった。このほか近年日本の一部に定着した地中海原産のオオクビキレガイも農作物のほか陸貝を捕食すると言われており、ニュージーランドのヌリツヤマイマイはミミズを捕食する大型種として知られる。フランスでは犬の糞を食す種も観察されている』。『またカタツムリは殻を形成・維持するためにカルシウムを多く必要とし、捨てられた貝殻や古くなった他のカタツムリの死殻をなめることもある。雨が降った後、ブロック塀やコンクリート壁にカタツムリが沢山現れる所を見ることがあるが、これもコンクリートに含まれるカルシウムを摂食する為に集まっている現象である』とあり、モースは腐敗が進んだ植物残骸や同族の死殻を舐めるカタツムリを腐肉を食っていると錯覚した可能性もあるように思われる。

「オカミミガイ」原文“Auricula”。石川氏の訳の「オカミミガイ」とは腹足綱有肺目オカミミガイ上科オカミミガイ科オカミミガイ亜科 Ellobium 属オカミミガイ(陸耳貝) Ellobium chinense を及び同科の種を指す。ウィキの「オカミミガイ」によれば、『三河湾以南の本州・四国・九州と中国南部に分布』し、『河口や内湾など汽水域周辺に広がる塩性湿地に生息』する。『満潮線より上の一定の高さまでに生息し、明らかな帯状分布を示す。このため陸から水域への傾斜が緩やかで広大な塩性湿地が広がる所ではしばしば多産する。海岸性の貝だが水中に入ることはほとんどなく、一方で乾燥した所にも生息せず、生活様式はカタツムリに近い。暗く湿った所を好むので、昼間は枯れ葉・転石・漂着物などの下に潜んでいる』。成貝は殻長四〇、殻径二五ミリメートルに達し、『日本産オカミミガイ類の中では最大種である。貝殻はラグビーボールのような楕円球形で厚質である。殻表は縫合下にごく細かい布目状彫刻があるがほぼ平滑で、光沢のない褐色の殻皮をかぶる。殻頂は浸食されて欠けることが多く、丸みを帯びている。殻口は縦長の水滴形で周辺が白く、外唇が肥厚する。殻底に近い内唇と軸唇に』計三個の『歯状突起が突き出るが、最も上に位置する突起は痕跡的である』。『軟体部のうち、殻外に出す頭部-腹足部の色はベージュで、しわ状の模様がある。触角は橙色で短い』。『若い個体では殻口外唇が肥厚せず、殻頂周辺に細かい短毛が生える』。また三五ミリメートルを超えるほどの老成個体にあっては、『褐色の殻皮が剥がれて黄白色を呈し、貝殻もいびつに変形してジャガイモのような印象になることが多い』。『標準和名は、海岸の陸地に生息し水中には入らないことと、殻口に』二~三箇所『突起が出た様がヒトの耳たぶに似ることに由来する』とある。石川氏がかく訳しているということは、恐らく貝類の専門家に教授を願ったものと思われ、とすると古くはオカミミガイが Auricula 属と呼ばれていたことになる。次の「メラムパス」も潮間帯に棲息する同じオカミミガイ科の一種ハマシイノミガイMelampus nuxeastaneus と同定出来ること、「トランカテラ」も陸生貝類であることからもこれは自然には思える。……しかしどうも、原文の属名“Auricula”が気になったのである。……この語はラテン語の“auricuia”が語源と考えられ、それは「小さな可愛いらしい耳」の意や、動物や人の「耳介」の意であるから陸耳貝(おかみみがい)と確かにしっくりくる。……しかしこれは現在の属名には見当たらない。ただ、幾つかの種小名としては見かける。その一つは、ニシキウズ超科ニシキウズガイ科ヒメアワビ亜科スジヒメアワビ Stomatella auricula であるが、この種は熱帯系で本邦産ではないようである。但し、このヒメアワビ亜科 Stomatellinae に属する本邦産のアワビ形の貝は、表面の絹糸状の微脈や、内面の真珠光沢が非常に美しい(と私は感じ、かつてはビーチ・コーミングでよく採取した)ので、モースが好んでゴミ捨て場から採取し、これらの仲間を指して、“Auricula”と記載したとしてもおかしくはないのではないかなどと思ってしまったのであった。但し、モースは明らかにフォントを変えて斜体表示しているから、正式な属名として記載している以上、私の想像は科学的には誤認誤解である。……ここまで読んで戴けた方、私の妄想にお付き合いして戴き恐縮である……ともかくも古い属記載には「オカミミガイ」としてこの属があるのかも知れないが、見出せなかった。識者の御教授を乞う

「メラムパス」原文Melampus”。腹足綱有肺目オカミミガイ上科オカミミガイ科ハマシイノミガイ亜科ハマシイノミガイ(浜椎の実貝)Melampus nuxeastaneus を指すウィキハマシイノミガイによれば、『南日本から台湾までの熱帯・亜熱帯域に分布し、外洋に面した磯の潮間帯上部に生息』し、成貝は殻高十五ミリメートルに達するが、多くは一〇ミリメートル前後で、『殻はやや厚く、中盤が膨らんだ紡錘形で和名通りドングリに似た形をしている。日本産ハマシイノミガイ属の中ではツヤハマシイノミガイ M. flavus に次ぐ大型種で、殻頂がわりと高く尖る』。『殻の表面は弱い光沢のある褐色で、個体によって黄・紫・赤・黒などを帯びる。体層に淡黄色の横縞が数本入るもの、または成長痕の白い縦線が入るものもいる。殻口は縦長で殻底付近がわずかに肥厚・外反する。殻口の内側に向かって』内唇二歯、軸唇一歯、外唇の内側に櫛状の低い五~十歯を持つ。『軟体部のうち殻の外に出す部分はクリーム色だが、触角と目は黒い』。『南日本から台湾まで、暖流に面した熱帯・亜熱帯域に分布する。日本での分布域は太平洋側は房総半島以南、日本海側で山口県以南とされているが、富山県での記録もある』。『外洋に面した岩礁海岸の満潮線付近に生息し、海岸動物としては帯状分布の範囲がかなり高所で狭い。岩の割れ目・転石下・漂着物の下などの暗く湿った物陰に潜み、岩の表面に出ることはまずない』とある。

「トランカテラ」Truncatella”。腹足綱前鰓亜綱盤足目リソツボ超科クビキレガイ(首切れ貝) Truncatella guerinii である。千葉聡氏の「進化の小宇宙:小笠原諸島のカタマイマイ」の中の小笠原諸島のクビキレガイ科によれば、本種は鹿児島県以南のインド洋~太平洋地域に広く分布し、一般に海浜の礫下や打上物や落葉下に棲息する。幼貝の間は殻頂が尖っているが、成長とともに殻頂部が脱落してしまうため、頭部が切れたような形となって現認され、それが本種のおどろおどろしい和名の由来ともなっている。海浜性の貝であるが直達発生であってプランクトン幼生期を持たない。但し卵嚢がデトリタスに付着して海中を長期漂うと推定されており、これが本種の広分布域の理由と考えられている、とある(リンク先は引用さえ禁じているので引用記載としていない。個人的にネット上に公開して誰もが読めるようになっていながら、無断引用を禁じるこの方は、総ての文章を書く際、総ての人に引用許諾を求めておられるのだろうか? 妙なことが気になる私である。リンク先の記載自体はすこぶる素晴らしいものである。ただふと感じた違和感には述べておきたいのである)。なお、本種はその歩行方法が非常にユニークなる由、リンク先をお読みあれ。面白い。]

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