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2015/02/17

「いとめ」の生活と月齢との関係――附・「いとめ」精虫及び卵、并びに人類の精虫電気実験に就きて――   新田清三郎 (Ⅴ)

 バチの群游と月との間に深き關係のあることは明かである。第一、第二、第三、第四と期間を置いて浮游することは内的條件の具備は勿論なれども月の位相によって性慾的危機が定まる爲であらう。南洋に住む深海動物の一種なるパロロ蟲即ち Eunice viridis も月位によつて一定時期に大群游をなすことが知られてゐる。

 パロロが下弦を選んで群游すること、殊に夜間のみに出づるは強き日光を避くる爲であらう。

[やぶちゃん注:「深海動物」私の『博物学古記録翻刻訳注 ■10 鈴木経勲「南洋探検実記」に現われたるパロロ Palola siciliensis の記載』で紹介させて戴いた柴田康平氏のサイト「ミミズあれこれ」の中の「(3)月とミミズ 月の満ち欠けでミミズが出現するメカニズムを考える」(本種の説明を含むネット上の記載としては最も正確で纏まったものと私は考えている)で孫引きさせて戴いた今島実著「環形動物多毛類」(生物研究社一九九六年刊)によれば、

   《引用開始》

 多毛綱ゴカイ科の環形動物で、生殖のために遊泳する生殖型個体のうち日本にいるものをバチという。ウキコ、ヒル、エバともいう。イトメのバチを日本パロロ(英名 Japanese palolo)ともいう。イトメは、砂泥中で生活している個体が成熟してくると、10~11月の大潮の夜に雌雄の体の前方1/3がちぎれ、生殖物(雄は精子を、雌は緑色の卵)を充満させて泳ぎだし、生殖群泳する。

 その他のゴカイの生殖時期は種によって異なり、新月後と満月後の数日間に大きな群泳が見られるが、月齢、潮位、天候などに大きく影響をうける。

 また、イソメ(多毛綱イソメ科 Eunicidae に属する環形動物の総称)は、日本ではイワムシ、オニイソメなど19種が知られている。

 Palola siciliensis は本州中部より熱帯域のサンゴ礁にすむが、生殖時期になると大量の生殖型個体が群泳。サモア、フィジー、ギルバート諸島では毎年10月と11月の満月から8日目と9日目の日の出前の1~2時間に生殖群泳をする。泳ぎだす部分は体の後方の3/4くらいで、泳ぎながら生殖が行われる。このように生殖群泳する虫を太平洋パロロという。

 大西洋でも西インド諸島で E. schemacephala が7月に生殖群泳をするが、 これを大西洋パロロと呼んでいる。

   《引用終了》

とある。ここで新田氏が示しているEunice viridis というのは、この Palola siciliensis と全く同一種か、それに極めて近縁の種であると私は考えている(次注参照)。そうすると今島氏の記載の「本州中部より熱帯域のサンゴ礁にすむ」という記載からは、現在用いられるところの狭義の「深海動物」というのは私は当て嵌らないと考える。但し、鈴木経勲の「南洋探検実記」のパロロの記載の冒頭は、『レバ港に一奇蟲あり其の名を「バロヽビリデス」と云ふ該虫(がいちゆう)は同港の中に生息すれども平時之を見し人なく又漁具(ぎよぐ)等に罹(かゝ)りたることなし只(たゞ)年々(ねんねん)一度(いちど)即ち十一月十五日の朝(あさ)より晩に至る迄海上(かいじやう)に浮游(ふいう)するものにして土人は之を採り鹽漬(しほづけ)にして貯蓄(ちよちく)し以て祝祭日(しゆくさいじつ)の料理(れうり)に充つるなり』とあって、『同港の中に生息すれども』通常の漁師のリーフ内での漁では獲れないし、見かけないとする以上はリーフの底生に棲息しているとは言える。しかし、逆立ちしてもリーフ内の深みを「深海」とは呼ばない。この「深海動物」というのはやはりおかしい。

Eunice viridis」本州中部以南からインド洋・西太平洋・地中海・大西洋に広く分布している環形動物門 Annelida 多毛綱 Polychaeta イソメ目 Eunicida イソメ上科 Eunicoidea イソメ科 Eunicidae パロロ属ヒモイソメ(パロロ)Palola siciliensis  Grube, 1840、別名「太平洋パロロ」のことである。実は『博物学古記録翻刻訳注 ■10 鈴木経勲「南洋探検実記」に現われたるパロロ Palola siciliensis の記載』で鈴木はこれを、

 バロヽビリデス

と、まさに新田氏の学名をカタカナ書きにしたものに酷似した名を記しているのである。「バロヽ」は「パロロ」の誤認(現地音若しくは鈴木に本種の名を伝えた者の発音が微妙で、「パ」と「バ」は区別し難かったのかも知れない)としても、種小名らしき部分は不審である。「WoRMS - World Register of Marine Species - Palola siciliensis (Grube, 1840)を見ると、シノニム・データ他には、

 Eunice adriatica Schmarda, 1861 (subjective synonym)

 Eunice siciliensis Grube, 1840 (objective synonym)

 Nereidonta paretti Blainville, 1828

 Palolo siciliensis (Grube, 1840) (misspelling)

とあるが、他の記載の綴りを見ても「ビリデス」に相当するものは見当たらない。ところが「ビリデス」はラテン語の「virides」(ヴィリデス 「緑色をした」という意)由来と思われ、パロロの体色をよく表しており(個人ブログ r-kimura 氏の「~最後の楽園 サモアの国へ~青年海外協力隊」の「サモアの珍味“パロロ”解禁!」の画像を確認されたい)、強ちいい加減な謂いではないことが分かる。恐らくは、相応な学識を持った博物学者(フィジーは長く英国領であったからイギリス人であった可能性が強いか。但し、最初に上陸したのはオランダ東インド会社所属のオランダ人探検家タスマン(一六四三年)で、その百三十一年後の一七七四年にイギリス人探検家クックが再上陸してイギリス植民地となっている)がかく呼称した今は用いられぬシノニムではないかと私は考えている。識者の御教授を乞うものであるが、実は多毛綱 Polychaeta は代表的なゴカイ科 Nereididae 一つとってみてもかつては Hediste japonicaの和名がゴカイであったが、近年、同種が近縁な複数の種の複合体であることが判明、ヤマトカワゴカイ Hediste diadroma・ヒメヤマトカワゴカイ Hediste atoka 、アリアケカワゴカイ Hediste japonica の三種に分けられており、ゴカイという単一種としての和名は存在しないとある。これはウィキゴカイの記載であるが、私の所持する中で最も新しい部類に属する平成四(一九九二)年保育社刊の「原色検索日本海岸動物図鑑[Ⅰ]」ではゴカイ科に「ゴカイ」 Neanthes japonica (Izuka) が未だ示されてある。恐らくこれはこの、Hediste japonica の旧シノニムと思われ、しかもこの単一種でないことが判明したのは文字通り近年(ウィキには「いつ?」の要請注記があってクレジットがない。ミレニアム前後か)であることも分かった(因みにこの現行の最も大掛かりな海岸動物図鑑には何故か、イトメ Tylorrhynchus heterochaetus が独立項として載らないのは頗る不審である(ゴカイ科の科・亜科と属の検索にに載るのみ)。イトメの学名も多様なシノニムが学術論文でも複数多用されているのは既に私の注で見て来た通りで、ともかくもこの多毛類の分類にはアカデミックな世界自体に大きな見解の相違が林立しているらしいことがよく分かった。]

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