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2015/05/12

大和本草卷之十四 水蟲 介類 石蜐(カメノテ)

石蜐 本草介水ニノセタリ又龜脚ト云和名カメノテト云

筑紫ニテシイト云殻トモニ煮テ肉ヲ可食貝ノ類色紫

ナリ長一寸四五分猶大ナルモアリ半ヨリ上ハ龜脚ノ皮

ノ如ク半ヨリ下ハ爪ノ如クウラ表各二三片相合テサキ

ハ尖ル海岸ニ生シ垂レテ不移動果ノ木ニ付ルカ如シホ

ヤト訓スルハアヤマレリ椎ノ實ノタレタルニモ似タリ故ニシイト云

○やぶちゃんの書き下し文

石蜐(カメノテ) 「本草」、介類にのせたり。又、龜脚と云ふ。和名、「カメノテ」と云ふ。筑紫にて「シイ」と云ふ。殻ともに煮て、肉を食ふべし。貝に類。色、紫なり。長さ一寸四・五分、猶ほ大なるもあり。半ばより上は龜の脚の皮のごとく、半ばより下は爪のごとく、うら表、各々二・三片、相ひ合して、さきは尖る。海岸に生じ、垂れて移り動かず。果(くわ)の木に付けるがごとし。「ホヤ」と訓ずるは、あやまれり。椎の實のたれたるにも似たり。故に、「シイ」と云ふ。

[やぶちゃん注:節足動物門甲殻亜門顎脚綱鞘甲亜綱蔓脚下(フジツボ)綱下綱完胸上目有柄目ミョウガガイ亜目ミョウガガイ科カメノテ Capitulum mitella 。私は伊豆下田で数度食した。旨い。カメノテ食を伝え聞いていたイタリアのナポリと佐渡島で探してみたが、残念ながらお目にかかれていない。

「石蜐」(カメノテ)は左ルビ。「石蜐」は音「せきこふ(せきこう)」または「せきけふ(せききょう)」と読む。

『「本草」、介類にのせたり』「本草綱目」では「介之二」に入っている。寺島良安は「和漢三才図会 介貝部 四十七」の「石蜐」で(私の電子テクストより当該部分を引用)、

    *

 「本綱」に『石蜐、東南海中に生ず。石上の蚌蛤の屬。形、龜脚のごとく、亦、爪有り。状、殻、蟹の螯(はさみ)のごとし。其の色、紫にて、食ふべし。長さ八、九寸の者有り。春雨を得れば、則ち節に應じて花を生ず。』と。

   *

と引用して、正しくカメノテに同定している。

「一寸四・五分」四・三~四・五ミリメートル。

「半ばより上は龜の脚の皮のごとく、半ばより下は爪のごとく」益軒は鱗状の鱗片で覆われていて概ね潮間帯の岩礁部の割れ目に附着する柄部を「上」、頭と捉えており、殻板の覆われた現在我々が頭状部と呼称している部分を「下」と表現しているので注意。磯で観察した際、益軒と言うように海水面に向って生えるように固着している個体を見ることが多く、寧ろ、亀の手として比喩した場合、手先相当部分を「下」と表現しても存外おかしくない。

「爪のごとく、うら表、各々二・三片、相ひ合して、さきは尖る」実際には頭状部を構成する殻板はもっと多く、ウィキの「カメノテ」によれば、『頭状部は殻板と呼ばれる大小の硬い殻が左右相称に並ぶ。このうちの先端側の4対は大きさはそれぞれに違うが先端がとがった三角で、その外側にはより小さいものが環状に』十八~二十八個並ぶ。『主要な殻は特に突出したものが3対あり、その中央よりのものが最大の長さを持つ。その前後の殻は幅の広いものと狭いものがあるため、最大のものは中央より偏って存在する。この部分に蔓脚のほとんどが収まるが、これは構造上は腹部に当たるので、幅広い殻の方向が前方に当たる。これらの殻を、前方から楯板・背板・峰板と言い、さらに楯板より前により小さな嘴板など、さらにいくつかの目立つ殻がある』とある。ウィキを認めぬアカデミズム礼讃者のために、平成七(一九九五)年保育社刊の西村三郎編著「日本海岸動物図鑑[Ⅱ]」の「カメノテ」の記載を示しておくと、黄褐色で、体は頭状部と柄部に区分され、全体が石灰質殻板に覆われている。体長は一般に三~四センチメートル、大きいものは七センチメートルに達する。頭状部は八枚の長く伸びた三角形の(峰板・嘴板及び対を成す楯板・背板・側板)と、その基部にある二十を超す付随殻と呼ばれる殻板から成る。柄部は円筒形で、石灰質の柄鱗で覆われる。本州以南の潮間帯の岩礁に棲息し、主に岩の割れ目や隙間に群生する、とある。

『「ホヤ」と訓ずるは、あやまれり』この誤認に就いて私は既に『博物学古記録翻刻訳注 ■13 「本朝食鑑 第十二巻」に現われたる老海鼠(ほや)の記載』及び『海産生物古記録集■4 後藤梨春「随観写真」に表われたるボウズボヤ及びホヤ類の記載』(孰れも「本草綱目」の「石蜐」をホヤのことではないかという誤った推定同定を行っている)に於いて詳細な誤認識の考証を行っているので参照されたい。]

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